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「ただいま」
七海は玄関のドアを開け、母親がいないことを確認して、両親の寝室の扉をそっと開いた。
薄暗かったので電気をつけようとする。だが初めてこの部屋に訪れるので、すぐには見当たらない。
「あった……」
眩しさに目を細める。
九畳ほどの部屋はすっきりと整っていた。まず真正面に茶色の机。机上にはパソコンと写真があり、左側には巨大な本棚が置かれている。左側には押し入れがある。そこに両親の寝具があるのだろう。七海はそれを尻目に本棚へ向かった。
『悲しみが薄らぐ方法』『悲しみと生きる方法』『愛する我が子を亡くしたら』『あの日家族の命は奪われた──交通事故の遺族の手記』
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