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 七海の鼓動はどきりとした。恐る恐る首を張り巡らす。  穏やかで物が少ない部屋にある異質的な存在が視界に飛び込んだ。真っ黒なそれは一見お洒落なサイドボードにも見える。──ただ決定的に違うものがある。  小さなの横には笑顔で写る女の子の写真が立てかけられている。  七海は何かに惹きつけれれるように、フラフラと近づいていった。 「洋奈……」  小さな呟きが空気を揺らす。写真の主は他でもない、洋奈であったのだ。 「あれ……?」  その写真には二人の少女がいた。一方はは洋奈で、もう1人の三歳くらいの女の子は…… 「私……?」  子供の泣き声、騒然とする周囲、サイレンの音──それらが、突如七海の脳内を支配した。  ──なんなんだ……これ……  七海は母親が帰ってくるまでの1時間、呆然と立ち尽くしていた。
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