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「洋奈がずっといないの」
洋奈の正体がわかって早一週間。七海は朝、正宗が登校するなり声をかけた。
「そっか……」
正宗は小さく頷き「やっぱり……」と付け加えた。
「やっぱり?」
予想と違ってそこまで驚いた顔を見せず、どこか悟ったような面持ちの正宗に、七海は疑問を抱く。
「この前言い忘れたけど──この前の、例外な幽霊の話覚えてる?」
「うん」
いつの日かファーストフード店で話した。
死にたがっている人を救うために存在する幽霊ことだ。
「ああ言うの、僕らは使者って言ってるんだけど、使者の役割教えたよね」
「うん」
「それで、言い忘れてたって言うか、昨日思い出したんだけど……使者は正体がバレたら──」
正宗は手を広げた。そして握り締めていた手をぱっとマジシャンのように開いた。
「消滅するんだ」
「しょう……めつ?」
七海はたどたどしく返す。『消滅』と言う単語は知っている。でも、どこか未知のおぞましい言葉に感じ、はっきりと言うことができなかった。
「うん、魂も肉体も」
陰鬱な呟きが朝の教室を揺らした。
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