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けたたましく鳴るアラームで意識が浮上する。この感覚にも随分慣れてしまったな、と私は思った。初めて聞いた時はなんてやかましい音だと、苛立ちまぎれにスイッチに手を伸ばしたというのに。
「う、ん……」
今ではすっかり、アラームを止めるよりも先に、窓へと視線を向けるだけの余裕ができるようになってしまった。ひんやりとした空気が、窓ごしでも伝わってくる。外界の音が、吸われてしまったかのように遠く感じる。
白だ。一面、真っ白に染まった景色がそこにある。
この地方にしてはけして多くはない雪。それも、これほどまでにしっかり積もるのは相当珍しいことのはずだった――実際はもう、私の目に映る景色はずっと白のまま。昨日も一昨日も、ずっと雪だったのだけれど。
――いいのよ、これで。これで、いいんだから。
アラームが鳴っている。
そろそろ本当の意味で“目覚め”なければ、命が危ないと――私に危険を知らせる、アラームが。
「お母さーん!」
バタバタと階段を駆け下りてくる足音を聞きながら、私は再びアラームを切るのだ。
待ち望むのは、一つだけ。永遠に褪せることのない、たったひとりの娘の姿だけだ。
「お母さんお母さん!外雪だよ雪っ……ってまだパジャマなのー!?」
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