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特別研究室の中は電気も消えてしまっているのか真っ暗だった。
だが、確かに何かがいる気配だけはした。
レイたちの元にその何かがいかないように音をたてずに扉を閉めると、部屋の中は暗闇にしはいされる。
幸い、カクは濃いサングラスをしているため目が慣れるのは比較的早かったが、それでもこの部屋に何者かとカクだけが取り残されているようなそんな危険な状態には変わりない。
――翠?それとも美雪?
そう考えてみたが、その何かは人とは違う気配がする。
ふとそんなとき、白い何かが動いているのを視界の隅にとらえた。
「……誰かいるのか?」
カクはそう声をかけてみるが、特に反応はない。
……いや、どちらかというとその白いものはカクを取り囲むように蠢き、様子を探っているようだ。
それは壁のように巨大な何か。
研究室の設備か何かかもしれないとも思ったが、動き方が不自然だ。
これは明らかに意識を持った何か生き物の動き方。
―――状況を確認する為には明かりが必要だ
この研究室の明かりを含む設備の電源は別室のモニタールームにある。
外にいるはずのレイに頼むしかなさそうだ。
中の生き物の動きに注意を払いつつ、端末機を上着から取り出そうとした。
―――その瞬間
暗かった部屋が真っ白な光に包まれた。
急な出来事にカクは目が眩み、なにも見えなくなる。
すると少し離れた所から呻き声のような音がした。
『…………して……ろ…し……て……』
呻き声と共にか細い女性の声が聞こえる。
どことなく聞き覚えのある声……カクはその声の主を確認するためゆっくりと目を開く。
少しずつ目が慣れてくると最初に確認ができたのは真っ赤な二つの目だった。
…….白の世界にやたら目立つそれはじっとカクを見つめていた。
さらに視界がはっきりしてくると、その目の持ち主の輪郭が見えてくる
『………コロ……シ…テ……クル…シイ……』
声を発していたのは、研究室を埋め尽くすサイズの真っ白な大蛇だ。
口を開き牙を向ける姿は言葉とは逆にカクを威嚇しているようにも見えた。
「………まさか、美雪……か?」
カクの記憶にある似たような声の主を呼ぶ。
すると大蛇の瞳にうっすらと涙のようなものが浮かぶ。
『……カク……さ…ま……オネガイ……コロ…シテ……』
―――間違いないこの大蛇は美雪だ。
なぜこのような姿になったのか疑問はあるが、カクはサングラスを取るとその赤い目を優しく見つめた。
「何があったかはわからない。だが、落ち着いて……必ず僕が助ける。だから、『殺してくれ』なんて言わないでほしい。」
諭すようにカクがそう言うと大蛇は動きを止め、しばらくカクを見つめた。
―――大丈夫、僕が君を助けるよ。
そう口にする前に悲鳴をあげ、大蛇は暴れだした。
『あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ァァァァァァ!!!クルシイィィィ!!タスケ!タスケテ!!』
急に暴れだした大蛇にカクは困惑した。
カクの言葉が逆に彼女を苦しめてしまった。
なぜそうなったのかカクには理解ができなかった。
予想外の状況にただ立ち尽くしているカクに大蛇の尾が襲いかかった。
―――しまった!
普段なら避けられるはずの攻撃だが、反応が遅れてしまい逃げ切れない。
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