最悪の結果

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 ―――このままでは潰される!  カクがそう思った瞬間  大蛇の頭の上から何かが落ちてくるのが見えた。  白の蛇に飛びかかる漆黒の闇の色を持つ黒い翼の小さな何か  それは小さな手に巨大な鎌を持ち、大蛇の頭を真っ二つに切り裂いた。  まるで花を切り取るかのように軽やかに、ザクロにナイフを入れるかねように軽く鮮やかな動きで……  ―――白の世界が赤く染まる。  黒き翼の何かがふわりと床に降り立つ。  その足元には大蛇ではなく、赤い血溜りに浮かぶか細い腕と足が生えた肉塊が転がっていた。  黒き羽の小さな生き物は足元のものには目もくれず、くるりと振り返った。 「本日の任務を遂行しました。」  そう言った子どもの口許は少し微笑んでいるように見えた。  まるでスローモーションのようにその瞬間が鮮明にカクの記憶に残った。  ―――僕はとんでもない過ちをおかしてしまった  カクは膝をつき、項垂れた。  そんな彼の横を白い白衣を着た男が横切る。  ………レイではない。  カクより少し背の高い黒髪の男は、カクの存在に気付きもせず子どもの元に向かう。 「よくやった『試作品(プロトタイプ)』。  『失敗作』にしては優秀な働きだった。」  この研究室の主、翆の抑揚のない静かな声が響く。  美雪の身に一体何があったのか。  なぜ黒羽がここにいるのか  疑問に思うことも多くあったが、それよりもカクを支配するのは恐怖。  そして、美雪を助けることができなかった無力感。  ―――あれは……あれ(黒羽)は生かすべきではなかった  黒羽は震えるカクを不思議そうに首をかしげ、見つめている。  さきほど朗らかに会話をしていたあの時と同じ。  いや、もしかしたらあの時より少し生き生きとしているようにも感じる。  ―――黒羽は兵器なんて生易しいものじゃない  そんな黒羽を見てカクは確信した。  自分の過ちと底知れぬ恐ろしいものを目の前にしているという現実に。  ―――あれはバケモノだ。  血だまりの中に黒い羽が浮かぶ。  芯の先まで黒く染まったその羽は、血の色に染まることもなくまるでそれを吸って生きてさえいるかのように存在を主張する。  カクは底知れない恐怖と後悔にただ嗚咽を漏らすことしかできなかった。
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