第一章 画面の向こうの光景

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 彼は、その屈辱をバネに野球へと打ち込んだのか、その年の高卒新人でただ一人の開幕一軍を手にしていた。  リードした試合で主力選手を休ませるために、開幕戦の後半に出場した拓人はファインプレーを披露して、その能力の高さを周りに証明した。  それからは順調に実力を伸ばして、三年目でセカンドのレギュラー、四年目にはオールスターへと出場。階段を駆け上がるようにステップアップしていった。  契約金を失ったことは、今となっては意味がない程度は親戚たちも分かっているだろう。  拓人は、自分に対する取材の時、両親以外の親戚たちへの接触は完全禁止と言っているそうだ。だから、ある記者が彼らに会ったと知ると、その新聞社の取材を拒否して大騒ぎになったと、朋宏は知花から聞いた。  彼女の家族にだけは、拓人も連絡をよこしてくる。  拓人の叔母の夫である、知花の父親は温厚な男性で、会社経営に失敗した大宮家へ秘かに援助をしたと言った。  さすがに金銭的な援助は、他の親戚との関係もあるので無理だったけど、新しい住居と仕事を紹介したそうだ。  その場所が隣りの県。だから彼はその県の高校に進学したわけだ。  朋宏も野球は続けている。ただしポジションは補欠……拓人からは相当遠い程度は、朋宏にしても充分に理解している。
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