第一章 画面の向こうの光景

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 「ね、朋はどの高校に行くの?」  塾の帰りに知花が訊いてきた。中学校野球大会も予想どおり一回戦敗退。レギュラーでも補欠でも平等に引退だ。次は高校で甲子園を目指すことになる……一応。  朋宏は野球部では補欠で終わったけど、勉強はかなりできた。  学年で一桁なら先生たちが期待する。才能がない-相当哀しい評価だけど反論できない-野球を辞めて、県内でも知られる進学校に行ってほしいというのが、当たり前のアドバイスだというのは朋宏にも分かる。でも、朋宏は諦めたくなかった。  選抜高校野球大会  小学校高学年の頃に意味を知った。  各地区の秋季大会の上位校から、出場するチームを選ぶ。  盛り上がりは各県代表が出場する夏の甲子園には敵わない。でも、冬が終わって一番最初の野球大会だ。  この選抜大会が野球の季節の始まりを告げる。  そして、入場曲も選抜される。
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