第一章 画面の向こうの光景

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 =今年も首位打者争いでトップを走っている大宮拓人選手です=  女性アナウンサーのテンションが、普段よりも高いのが分かった。  今年、二十七歳の拓人はいまだに独身。夫にしたい有名人でも上位に入っていると、朋宏は知花から教えてもらった。  画面を見ると、男から見ても理由が分かる。  甘いイケメンなのに、雰囲気が真面目そうで野球一筋という感じだ。遊んでないだろうな……と朋宏でも思う。  昨年、首位打者のタイトルを獲得して、年棒は一流選手と呼ばれる金額になった。意外だけど海外志向がないらしく、球団と複数年契約をしている。一時期、移籍するなら地元のチームではという記事がスポーツ新聞に出たことがあったけど、今でも入団した時のチームの所属だ。  拓人は、普段のトレーニングのことや打撃好調の理由を話していた。  (フォーム変えたんだ。気づかなかった……)  同じ中学生でも、プロ野球と同じく硬球を使用するリトルシニアリーグの選手で、強豪校にスカウトされるような子供なら、きっとすぐに分かるはず。  でも、朋宏のような平凡な野球少年では気づかないことも多い。それがプロレベルの変化なら……
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