第一章 画面の向こうの光景

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 プロ野球選手は実力がケタ違いだから、すごい以外はないけど、甲子園に出場する球児を思うと朋宏も胸がざわめく。  幼稚園の時、知花に約束した。選抜大会に連れていくと……  彼女はもう憶えていないようだ。仕方ない。幼稚園児の他愛ない夢だと本人も思う。でも、朋宏は忘れたことがなかった。  二人の住んでいる県は、甲子園には特急で行ける距離だ。割合近い。知花の母親が当時言っていた意味が分かる。  あの、みんなが注目する場所でプレーする自分を知花に見てほしい……  溜息が出る。優等生として知られている彼と、可愛いと男子に人気のある知花は、家が隣りの幼馴染以上の関係とは誰にも思われていない。実際そのとおりなので、朋宏は何も言えない。  確かに、小学校高学年から中学校に入る頃は、女子と一緒に歩くのが恥ずかしくて、朋宏も知花との行動は避けていた。  彼女も同じだったようで、三年程、二人の付き合いは空白がある。  でも、塾が同じなので、また二人で歩くようになった。でも、全然噂にならない……知花を狙っている男子も、朋宏のことはまったく気にもしていない……
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