第二章 画面の向こうの状況

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 この県の桜は、卒業式が終わって少し経ってから咲く。だから、入学式の時は当たり前だけど花は全然ない。葉っぱになった桜の木の下で、朋宏は母親が持っているデジタルカメラに視線を向けた。  「もうちょっと笑顔でね」  「……」  本人的には笑っているつもりだけど、母親からは違うらしい……  おかしくもないのに笑うのは結構難しいけど、待っている生徒と親がいるので、朋宏は頑張って笑顔を作って撮影は無事に終わった。  無事に希望した県立高校に朋宏は合格した。トップではなかったけど、かなり上位での合格らしいと、朋宏は担任教師から聞かされた。努力の成果だと思うと素直に嬉しかった。  知花も合格して、少し離れた高校で入学式のはずだ。  今までずっと一緒だったから少し寂しいけど、目標のためだから朋宏は我慢した。幼馴染だからといって、これからも傍にいられるわけでもない。
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