第二章 画面の向こうの状況

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 進学校だったけど、朋宏の高校生活は静かに始まった。同じくらいの成績の友達もできた。穏やかな朋宏の性格が良かったのか、変な対抗意識を誰かに持たれることもなくて平凡な毎日だった。  でも、やっぱり野球を諦めきれないので、朋宏は部活も行うことにした。  両親は成績維持を条件に部活動を認めてくれた。進学校でもそれなりに練習は厳しくて大変だったけど、朋宏は一緒に入った同級生たちと、玉拾いやグラウンド整備、そしてマネージャーの代わりの雑用を行っていた。  それから予備校へと向かう毎日だ。  「なぁ、一ケタもらえるかな」  同じ予備校に向かう野球部の同級生の言葉に、朋宏は少し考えた。野球部は全員で十五人。しかも、各学年綺麗に五人ずつ。なので、二、三年生で十人だ。先輩たちがレギュラーなら、当たり前だけど一年生は補欠の番号になる。  「正直難しいと思うな。僕たち、先輩より上手いと思えないから」  この学校は決して……というか、まったく強くない。それでも先輩たちは一年生よりも野球は上手だ。  「そうだよな。でも、番号もらえるのか……俺、初めてなんだ」  「あ、僕もそれは同じ。ちょっとわくわくしてる」  二人は番号入りのユニフォームを思いながら予備校に向かった。
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