第二章 画面の向こうの状況

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 自分で考えて落ち込んだ朋宏は、気を取り直して賢吾に言っていた。  「でも……ほら、まだ三年あるんだから決めるの早くない?僕、そこは全然だけど、Bなら可能性あるじゃない」  朋宏の言葉に賢吾は笑った。  「そうだよな。まだ一年の一学期だもんな。  ところで野球部は続ける気なのか?こう言うと悪いけど、医学部なら野球やってる暇なんてないんじゃないのか?」  指摘は当たり前なので、朋宏は否定できなかった。  「そうなんだけどね……不可能なんだけど、甲子園に子供の頃に憧れてさ。大学入ったらそういうことできなくなるから、親も、成績落とさなかったらって条件付きだけど認めてくれたんだ。  今だけの特権だって」  賢吾は少し羨ましそうに朋宏を見た。  「なるほどね。甲子園か……目指すことに意義ありって感じか。確かに大学入ったら部活って感じじゃないもんな。俺は高校(ここ)と予備校と家の三角形だよ。それも青春ってか」  野球でも勉強でも何かに打ち込んだら、きっと後で懐かしくなる……幼いほど若い二人には、大人の言う意味は完全に理解できないけど、高校が三年間しかない程度は分かっていた。
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