第二章 画面の向こうの状況

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 少子化の影響か野球部は少人数だ。県予選はベンチ入りできる選手は十八人なので、全員入っても余る……寂しいけど、一年生でも背番号をもらえるということだから、朋宏は期待した。  (何番かな……背番号なんて生まれて初めて)  小学校の時も中学生になっても朋宏はいつも補欠で、観客席からチームを応援していた。もちろん一生懸命応援していたけど、グラウンドに自分がいないという事実は寂しかった。だから、初めて入るベンチにも期待大でわくわくしていた。  「北川くん、はい、十五番」  十五人のチームで十五番……少しがっかりした朋宏だけど、背中に縫いつけられた十五という数字に、段々嬉しさが湧いてきていた。  「ありがとうございます」  監督をしている国語の先生は自主性を尊重してくれて、厳しいことは言わない。無茶をして怪我をしたら部活動の意味がないという先生で、朋宏たちにとってはいい監督だと思っていた。  「この大会は、三年生にとって最後の試合になる。後悔しないように全力を尽くすんだぞ」  やっぱり今日も短い挨拶で終わらせた。でも、三年生は少し緊張感のある顔で頷いている。最後の試合……きっと、いろいろな思いがあるんだろうな、と朋宏は感じた。
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