第二章 画面の向こうの状況

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 「見て、背番号ついたユニフォームだよ」  珍しく早く帰ってきた両親に朋宏はユニフォームを見せた。二人とも、背番号入りのユニフォームを見るのは初めてなので、素直に感心してくれた。  「すごいな。一年生でベンチ入りか。二年生とか三年生は何人入れたんだ?」  「……」  野球部の人数をきちんと言っていない。説明の必要もないと思ったから、人数が少ない程度だけを言っていた。  「あのね……野球部って十五人なの」  「……」  今度は両親が黙った……それでも、気を取り直したように二人はお祝いの言葉を向けてくれた。やっぱり嬉しくなって、朋宏は浮かれてきた。  「試合の日、休みか分からないわ……残念ね。朋宏が試合に出てるとこ見られないなんて」  母親の言葉はそれだけで嬉しかったので、朋宏は首を振った。  「ありがとう。でも、出れるか分からないからさ」  十五番が出場する試合……ものすごくリードしているか、逆にリードされているか……出るとしたら、きっと負けている試合だろうな、と考える朋宏だった。
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