第二章 画面の向こうの状況

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 「僕、隣りに行ってくる。知花に見せたいから」  ユニフォームの背番号が見えるように身体の前で持たせたり、着させたりして、母親は朋宏をデジタルカメラで何枚も撮った。  終わった後、朋宏は知花に連絡をした。  入学してから少しの間、二人は連絡を取り合っていた。朋宏は野球部と予備校に入ったので、知花と会うこともなくなっていた。だから、毎晩、その日のできごとをやり取りしていた。  朋宏と違って知花は部活に入らなかったけど、仲のいい友達ができて、その子たちと放課後一緒に遊んで楽しいと書いていたので、朋宏は少し寂しかった。  違う学校になると、少しずつ行動にずれが出てくる。でも、それは仕方ないと、朋宏は割り切るように努力をしていた。やり取りができているから、完全に距離が離れたわけでないと。  でも、高校生活に慣れた頃から、送っても無視されるようになった。最初は体調が悪いのかと思ったけど、それが毎日になると、朋宏は不思議で不安になった。  知花は自分のことを嫌いになったのではないかと……
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