第二章 画面の向こうの状況

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 「あんまりいちゃ駄目よ。遅いんだからご迷惑よ」  のんびりと言う母親に返す。  「分かった。そんなに遅くならないようにするから」  答えたけど、あまり自信がなかった。知花に何か起こったなら、それを知るまでは帰りたくない。朋宏はユニフォームを掴んで隣りの家に向かった。  玄関を出てすぐだから、一分も掛からないで隣りの家に着く。朋宏は少し遠慮するようにチャイムを押した。母親に言われるまでもなく、遅い時間なのは分かっていた。  =はい……=  少し警戒するような声がドアフォンから聞こえてきた。  「あ……隣りの朋宏です。あの……知花さんに会いたいんですけど」  今までのように気軽に知花のことを呼べなかった。  =朋くん?久しぶりね。何かあった?=  微かに警戒するような雰囲気に、心臓の動きが速くなったけど、朋宏は努めて落ちついて返事をした。
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