第二章 画面の向こうの状況

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 「え……と。僕、野球部で背番号もらったんです。それで、見せたいって」  嘘でない。知花に見せたかったのは本当だから。聞いた知花の母親の声が少し落ちついていた。  =まぁ、そうなの。入って=  玄関の鍵が開いたのが分かったので、朋宏はおそるおそる柚木家へと入っていった。  知花の母親は玄関に来てくれて、スリッパを出してくれた。  「久しぶりね、朋くん。元気そうね」  「こんばんは。お久しぶりです。あの……知花は?」  訊いたのに、朋宏は答えをもらえなかった。  「とにかく入って」  ここでは事情を聞けないと分かった。でも、それで、何かあったという嫌な予感は当たったと朋宏は知った。
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