第二章 画面の向こうの状況

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 リビングにも知花はいなかった。とまどう朋宏に、知花の母親はソファを勧めてくれた。素直に座る朋宏を見ながら、彼女はお茶を出してきた。  少し喉が渇いたような気がしたので、お茶を飲むと渋みが薄くてホッとした。朋宏はあまり渋いお茶が得意でない。  「朋くん、レギュラーなの?」  知花の母親は、甥がプロ野球選手だけど、あまり詳しくないのが分かった。  「補欠です。でも、番号のある補欠……控えっていうんです。試合には出るかもしれないって感じです」  説明を聞いた彼女はそれでもお祝いを言ってきた。  「でも、すごいわね。朋くん、頑張ったんだ。おめでとう」  本当は知花にも見せたかった。彼女は従兄のことが大好きだから、野球をある程度知っている。きっと、笑いながら喜んでくれるはずなのに……
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