今ありて１ 扉を開く未来

第二章 画面の向こうの状況

　親に心配させたくないから言わなかった。でも、スマホを見るのも嫌になった。捨てられたスマホを見たら、親は驚いて事情を知ろうとするとは思わなかったのかな、と朋宏は感じたけど首を振った。

　追いつめられた知花に、余裕のある行動を取れるわけがない。

　いじめを受けていると、親に言えないのは朋宏にも分かるから、知花を責めようとは思わなかった。それよりも、友達だったはずなのに、略奪女だと知花のことを悪く言った女子生徒たちに激しい怒りが湧いた。

　知花は可愛くて男子に人気があった。自分の恋人が知花に興味を持ったのは、彼女のせいでは絶対にない。それなのに……

　その女子生徒はそんな性格だからよそ見をされたのだと、朋宏は思った。

　大きく傷ついた知花に早く会いたいけど、もうかなり遅い時間になっている。これ以上遅くなったら、自分の親が柚木家に来そうだ。怒られるのは構わないけど、知花や彼女の親に迷惑はかけられない。

　「明日、もう一回来ていいですか。もっと早い時間に来たいんですけど」

　「ええ、来てくれるなら嬉しいわ。朋くんになら、知花も話をしてくれるかもしれないものね」

　あまり自信はないけど、自分にできることは何でもしたいと、朋宏は思った。