第一章 画面の向こうの光景

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 階段みたいな、椅子がたくさん並んでる場所ではたくさんの人が何か叫んでる。  楽器を吹いてる人もいた。丸いポンポンみたいな物を両手で振ってる女の人もいる。みんな楽しそうに見えた。  「あ、お兄ちゃん、打つんだ」  その声に朋宏も真剣に見た。ヘルメットでよく見えないけど、背が高そうで、細くて動きが綺麗だった。  構えて勢いよく振ると、画面から歓声が聞こえてきた。  =ホームランです。大会第七号……=  七号の意味は分からないけど、ホームランの意味を少年は知ってた。すごく遠い場所にボールを飛ばすこと。知花の従兄はゆっくり走ってる。ホームベースに着くと、次の人と軽く手を合わせてる。ベンチに戻っても、みんなとタッチしてた。  「すごいね。ちぃちゃんのお兄ちゃん、ホームランだ。カッコいい……」  「うん。お兄ちゃん、すごいんだよ」  知花は、なぜか自分のように威張った。
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