第六章 手に入った未来と幸せな報告

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 約一か月後、本拠地で、そのシーズンの最終戦が行われた。  この年、拓人は四年ぶりの首位打者のタイトルをほぼ手中にしていた。確定でないのは、リーグの全試合が終了していないから。ただ、数字上の問題だけで、現実的には拓人が首位打者なのは決定だ。  そして、チームの成績は二位。優勝チームとはそれほど差があったわけではないが、もう一歩で追いつかなかった。  三位のチームと、レギュラーシーズン終了後、クライマックスシリーズ第一ステージになる。対戦相手は元の所属球団。拓人と誠司も気合が入っている。もちろん、相手チーム、マスコミも盛り上がっている。  スポーツでいう恩返しをする機会だろう。  「拓人、タイトルの祝いにヒット打ってやれ」  「はい!」  最終戦で勢いをつけて、元のチームを迎え入れる。  バッターボックスに向かう拓人は、今でも軽量のバットを小さく振った。自分への応援に気持ちを盛り上げながらバッターボックスに入ると、いつものように落ちついたフォームで構えた。
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