第一章 苦境に落ちた家族と差し伸べられた助け

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 拓人は、小学校からリトルリーグのチームに所属していた。野球を始めたきっかけは単純でありきたりだ。  父親は隣県-出身県のプロ球団のファンだったのだ。拓人はものごころついた頃から、テレビで放映されている野球中継を見ながら育った。  「お父さん、僕もこれしたい」  息子とキャッチボールが夢と言った父親は、拓人の希望を聞いて喜んだ。息子の希望を叶えるように、拓人を近くのチームへと入団させてくれた。  そして、拓人は学年が進むにつれて、その実力を発揮しだした。シニアリーグに入る頃には、拓人は全国でも注目される選手となっていた。親戚たちも、そんな拓人を褒めてきた。  彼は決して大柄ではないが、守備力が中学生を遥かに超えると評価されていた。拓人はチームでは不動のセカンドとして、有名選手となっていた。  もちろん本人も、自分の実力を理解している。実際に高校のスカウトが拓人のチームに接触してきた。まだ高校進学には早かったが、有望選手に対して年齢は無関係だ。  少子化の影響で野球人口は確実に減っている。有望な選手も同時に減る。他のスポーツでも大丈夫な実力を持つ選手は貴重だ。  だが、家庭環境の悪化は、拓人の進路を大きく変えようとしていた。
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