第一章 苦境に落ちた家族と差し伸べられた助け

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 傷ついた拓人は、学校に行くのも苦痛になっていた。  教室に入ると、ざわめきがぴたりとやむのだ。ひそひそとささやく声が、静まり返った教室に聞こえる。もちろん、拓人の耳にも……  〝知ってる?大宮くんの店、借金返せなくなって潰れたんだって〟  〝どうするの?返せないってことは破産?学校によく来れるね〟  〝知らな~い。パパの友達、大宮くんの親のきょうだいなんだ。貸したお金返せないって言われたって怒ってたよ〟  〝ひど~い。借りたもの返さないなんて泥棒じゃん〟  拓人の背中に冷たい汗が流れた。ひどい表現だが嘘でない分、心に刺さった。だが、返さないのではなく、返せないのだ。きちんと返すつもりだった。  誰が自分の身内を騙すのか……  だが、中学生くらいの子供は残酷だ。  今まで拓人はシニアリーグで有名人だった。羨望の視線を向けていた分、転落すると、暗い喜びを感じさせる視線を痛いほど受けた。
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