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第一章 Wrong justice
「うわ…やばいな、この事件」
ニュースを見ながら、ひとりの男が呟いた。
彼の名前は篠原柊也。寝ぼけ眼で、出かける支度をしている。鞄に何かを乱雑に詰めた。
「それを、お前が言うのか」
朝ご飯を作っていた男「司」が、向かって言った。
「自分が今から何をしようとしてるのか、分かってるのか」
「分かってるよ。樹から要請があった。ちょっとお仕事してくる」
「お前の言ってる仕事は、ほかの人とは違うんだろ」
「別に、ちょっと悪い人脅してお金貰ってくるだけだよ。サラリーマンと変わんねえだ
ろ」
「見た目だけな」
柊也は、スーツを着て、ネクタイを締めている。
「高校の時から思ってたけど、ネクタイ嫌いだ。苦しいし、首輪みてえ」
「そうだUSBメモリ忘れてた。柚希にもらってくる」
「S&W M500忘れてるぞ」
「銃でいいだろ、このミリヲタが」
「ミリヲタじゃない、銃ヲタだ。界隈の人に怒られるぞ」
「どっちでもいいよ、行ってくる」
「怪我すんなよ。どうせ手当てしてくれって言ってくるんだろ、めんどくさい」
「そういっていつもしてくれるだろ、このツンデレ」
「早く行け、お前の晩飯だけ、『ピーマン・エレクトリカルパレード・ドリームライツ』
にするぞ。怪我したら、『ピーマン・ドリームス・オン・ニンジン・パレード』な」
「なんだその地獄のパレード」
「デ〇ズニーが、野菜嫌いの子供たちをなくすため考えたパレードだ」
「嘘つけ、子供泣くぞ。行ってきます」
裏路地にあるバー「レグルス」から出る。ドアチャイムが、カランカランと軽快な音を立てる。この辺りは、周りの建物に陽が遮られ、朝でも暗い。あくびをしながら歩くと、レグルスの上の階の居住スペースから司が、大声で、「死んだら『ゴーヤ・イズ・ヒア』だからな!」と叫ぶ声が聞こえてくる。柊也は前を向いたまま手を振りつつ、(死んでるのにどうやって食えと…死体の口に突っ込む気か!……司ならあり得る)と恐怖を感じていた。
柊也は、通勤ラッシュのサラリーマンに紛れ、会社に着くと、先に来ていた樹と合流した。
「何で金髪の17歳女子を大手会社に潜入させようと思ったんだっけ、無謀でしょ」
「何で作戦の時誰も言わなかったんだろ。バレる前に気づいてよかった。」
「でも、社員1人拉致して社員証奪ってきた。写真も柊也のに変えておいた。受付の人、
風邪気味っぽいから多分バレない。」
「よし、行くか」
柊也と樹は別れ、樹はレグルスに戻った。
「ただいまぁ。すげえつかれた。」
柊也は、バーのソファに倒れこんだ。
「お疲れ、怪我は無いな。報酬は?」
「ざっと100万。あんまり無かったわ。でもこれでしばらくニートできる。」
「100万なら5人で切り詰めて2ヵ月ってところか。でも、柊也のことだから遊びま
くるつもりなんだろ。だとしたら、1ヵ月分も無いぞ。」
「マジで!? まだ次の標的決まってないのに!?」
すると、柚希が話しかけてきた。
「早く準備して、柊也。これから外に食べに行くよ。」
「は?何で。ラッキー。」
「今日で涙と柚希が入って100回目の仕事達成だったからな。前言っただろ。」
「あ~、すっかり忘れてたわ。」
涙と柚希が支度を終え、降りてきた。いつもジャージしか着ていない柚希と、中学の制服(Yシャツ・紺カーディガン・青ネクタイ・ズボン)しか着ていない涙がしっかり外着に着替えている。
「柊也さん、支度できました?」
涙が聞いてきた。
「俺はスーツのままで行くからいいわ。そういえば、どこに行く予定だっけ。やっぱり・・・」
「ス〇ロー?」「叙〇苑」「びっくりド〇キー」「サイ〇リヤ」「かっ〇寿司…?」
「・・・は?」
五人同時に別々の飲食店の名前を挙げた。
「いやいやいや…」
「祝い事なら寿司に決まってるだろ、俺と涙は寿司だから寿司2票な。」
「というか、サイ〇リヤって何だよ、せっかくのお祝いなんだろ。」
「安くて、お腹一杯になるから、コスパがいいのはこっちだろ。」
司がサイ〇リヤを提案すると、樹と柚希もサイ〇リヤに賛成した。
「私もサイ〇リヤがいい。ゲキムズ間違い探ししたい。」
「私も、ドリンクバーでメロンコーラ~白ブドウを添えて~作りたい。」
結局、多数決でサイ〇リヤに決定し、100回記念を盛大に祝った。
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