強面兵団長と、癒しのハーブティー

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 グスタフ・ガルンストは、イレーグ国内において、もっとも血気盛んといわれるオルタ兵団の中でめきめきと頭角を現し、わずか数年で団長にまでのぼりつめた男だ。  剣の腕はたしかなもので、白兵戦で彼に敵うものはいない。  かと思えば、馬を巧みに操って突き出す槍の腕もたいしたもので、鎧の継ぎ目を狙い敵を串刺しただとか、引っ掛けて空を舞わせただとか、嘘のような話も飛び交うほど。  つまるところ、それぐらいに彼は強く恐ろしい男として知れ渡っているのである。  ゆえに、彼はこう呼ばれる。 「さすが、化け物団長ですねえ」 「口を動かす暇があるなら、手を動かせ」  部下の軽口に返したのは、血まみれのグスタフである。  都のご令嬢が見れば卒倒しそうな殺戮現場だが、横たわっているのはマグルと呼ばれる大型の肉食獣。  グスタフらは、戦火にあった地方を訪れている。  近隣の村を統括する町・カースに居を構えた一団が到着してまずおこなったことが、森に出るといわれる獣の探索だった。  戦は人の命を奪うだけではなく、動物や植物の命も奪っている。  餌場を探して移動したか、肉食獣としても知られるマグルの姿を見かけたとなれば、捨て置くわけにはいかない。  イレーグ国における兵団は、治安維持部隊といえる。王族を守護する近衛騎士団と違い、泥臭く活動するのが兵士たちの仕事だ。  マグルの肉は脂が乗っていて、美味として知られているが、血がひどく臭う。  それは異臭と呼べるものであり、その血が新たな獣を呼ぶ可能性がある。  マグルを狩ると、その場で解体するのが習わしだった。 「これだけあれば、治療院の人も喜ぶでしょうね」 「そうだな。マグルから取った出汁は滋養効果も高いときく」 「マグルの粥は万能ですよね」  しばらくすると、兵団の面々が荷車を持って現れ、肉塊となった獣を積み、町へ戻ることになった。
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