強面兵団長と、癒しのハーブティー

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「では、私と同じですね」 「なに?」 「私も、化け物だと言われていますから」 「君のような可憐な女性が、なぜっ」  ずいと思わず近づいてしまったが、アーネは怯みもせず、苦笑して言葉をつづける。 「傷を治す、痛みもなくなる、なんて。普通の人間じゃありません――」  孤児院で育ち、怪我をした子を癒したことで露見した不思議な力。  癒し手なる存在を認識したのは、傷ついた兵士たちが近隣で拠点を敷いたときだった。  都から来た兵士の口から、癒しの力を持つ者は医師と並ぶ治療師だと知らされ、周囲の目は変わったという。  それまで敬遠していた人々が、治療を求めてやってくるようになったのだが、やがてべつの問題が起こった。  癒しの力は、あくまでも怪我を主としたものであり、身体の中をいじるような処置はできない。まして、死地へ向かう人を留めることなど、できるわけもない。  だが、人々はそれを糾弾した。  治る者、治らない者。  治療を受けられる者、受けられない者。  痛みが消えた者、消えない者。  命を落とす者、助かる者。  平等ではないそれらに異を唱え、声をあげる。 「馬鹿な! 医師とて、助けられない命はある。まして、年を重ねた者の命を際限なく伸ばすことなど、出来るわけがない」  戦場で命を落とした者は、たくさんいる。  哀しみは尽きないが、その憤りを無関係の人間に向けるのはおかしい。  人はみな、生まれたかぎりは、終わりを迎える。  そうした寿命に逆らうことは、この世の(ことわり)を狂わせる行為。神への反逆に等しい。  死を安らかに見送り、残された者に救いを与えるべき教会で、そんなことがまかりとおっていることが、グスタフには信じられなかった。 「兵団長さまは、お優しい方ですね」 「なっ――」 「ありがとうございます。私のおこないは、人を不幸にするだけではないのだと、そう思うことは罪ではないと、おっしゃってくださって」  顔をあげ、ちいさく笑みを浮かべる姿は、朝陽のせいか光輝いて見え、グスタフは眩しさに目を細める。  そんな彼の前で、アーネは前髪をいじり、左右色違いの瞳を上向きにした。 「この髪、子どもの頃よりも色が濃くなってきているんです。皆が言うには、私が殺してきた人たちの血を吸っているせいだとか。瞳も、片方は絵本の魔物と同じだし。私自身、人ではなくて化け物から生まれたのだと、そう思って――」 「それは間違っている!」  アーネの肩に手を置き、その瞳を覗きこみながら、言い聞かせるようにしてグスタフは告げる。
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