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表情がピリッとしていてかたい。エスコートできるのかな。この国の学校はそういうダンスの行事があるような話を聞いたことがあるし、まぁやったことあるだろうから大丈夫だろう。
「がっ、頑張るよ」
差し出してきた手が震えている。こんなお遊びみたいなダンスで緊張しなくても。夫と練習したときのように、そっと手を重ねて身を委ねた。夫よりも細いけど、ガッチリしたいい体格をしていた。
足を後ろに引いたり、戻したり。天才くんのぺース
にあわせてリズムをとろうとする。でも、腰に回された腕ですらびくりとも動かない。
「おい、ちょっと動けよ」
自分からリードする気は一切なし。足元を見ながらいうと、爪先が少しずつ動き始めた。
俺が言うのもおかしいけど、ぎこちないし全然リズムに乗れていない。
「ヘタクソー、リズムに合ってねぇじゃん」
酔いもあってストレートに言ってしまう。
「ごめん、ダンスはあんまり得意じゃないんだ」
オドオドしながら言う。やっぱりそうだったか、水泳はお手の物でもダンスは別の話なのか。そうなるとアテも頼りもなく、お互い分からないもの同士で、ただゆらゆらと揺れていた。
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