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「ちょっと待って、ちゃんと説明しろよ、どうしたんだよいきなり! 踊ってほしいて言われただけだよ、相手がいないみたいで」 彼に説明を求めようとして自分の状況を説明すると、彼の表情がますます険しくなる。 「ハニーはわかっていないようだな、どうしてあいつがお前を誘ったのか、そしてどうして俺が不快に思っているのか」 「えっ?」 ちょっと怖い。踊りに誘われたことがそんなに気に触ることだったのか。 「ご、めん」 天才くんがどうのということよりも、夫が不快に思っていることを謝りたかった。たしかに夫婦なのに、親戚とはいえ別の男と、まして彼が好意があると言っていた相手と軽率にダンスしようとしてしまったことは、よくなかったかもしれない。 「俺も仕事とはいえ、お前から離れてしまったからすまない」 短く言う。お互いに少しの沈黙。それが苦しくて、そっと抱きついた。 「もうマジで離れないから」 「お前は自覚がなさすぎる。自分がどれだけ魅力的な人間なのかを自覚した方がいい」 「そんなこと」 「俺がどれだけお前のことを愛して誇りに思っているかも、自覚してくれ」 「……」 自己肯定感が高くない自覚はある。でも、本当にそれじゃあダメなのかもしれない。 そこに天才くんの姿はもうなかった。
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