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「えーと、パスポートと着替えと」
手持ちのバッグとキャリーの中身をもう一度確認する。指差ししながら一つ一つ。
「あ、お土産は?」
振り返った先、リビングのソファでゆっくりとくつろいでいる彼が、白い歯を見せながらニンマリ笑った。
「ここにあるぜ」
でっかい紙袋を抱えている。
「いやあるぜじゃねぇって、しまえって。そのまま抱えていく気かよ」
「Oh! それもいいかもしれないな!」
「よくねーよ! さっさとしまえって」
行く前に何回ツッコませたら気が済むんだろう。国に帰るからテンション高いのはわかるけど、それにしたって自分の支度も中途半端なのはやめてほしい。
「まぁまぁそうカリカリするなよハニー、日本人の悪い癖だぜ」
しまいに舞うようにソファから降りて、呑気に肩を組んできた。
「悪かったな、おめぇのパートナー日本人だからしょうがねぇだろ」
それを露骨に手で振り払って怒りをアピールするけど、彼にはそんなアピール一つも効かない。
上機嫌なまま何度もほっぺたにキスを見舞ってきて、もう自分の機嫌なんかどうでも良くなるくらいのテンションだった。
とにかく彼から奪い取ったお土産をキャリーに詰め込んだ。
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