発症

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 私は、フリーのイラストレーターだ。企業に属さず、自ら仕事を得て描く方の人間である。その為に単身上京もした。  当初はがむしゃらに依頼を飲み込み、報われるかのように名前も売れていった。  しかし、それは嘗ての話だ。人気に火がつきかけた頃、スランプに陥った。何度描いても、納得いかないのだ。  今思えば、無理をしすぎたのかもしれない。仕事が苦しくなり、前のように依頼を受けられなくなった。  そして、皮肉なことに、そのタイミングで強烈な新人が表れてしまった。    そうなれば、辿り着くところは一つだ。人気低迷の末、活動の縮小を余儀なくされた。  それでも尚、意地が私を縛り付けた。だが、思いと裏腹に収入は減って行く。補助的な仕事は不可欠だった。  そうして、仕方なく求人雑誌を見た翌日、発症したというわけだ。
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