発症

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発症

「職業病ですね」  医師からの診断は簡潔だった。職業と症状を伝えた所、はっきりと告げられた。ただ、予測済みであり驚きはなかった。    職業病――それは、国内でも上位一、二位を占める病の一つである。文字通り、職業により症状が変わる、極めて珍しい病気だ。  そんな私の職業はイラストレーター、絵を生業とする人間である。いや、していたという方が正しいかもしれない。    正直、最初は夢かと思った。普通に寝て起きたら、世界が白と黒で出来ていたのだから。それも、濃淡一つない線画のような状態に。  しかし、それらに立体の感触を感じたことで、直ぐに現実だと理解した。そして、恐らくこれが職業病であるとも。   「発症するきっかけに、心当たりはありますか?」  医師はパソコンを見つつ、私に目配せする。  心当たりなら幾らだってあった。と言っても、特別際立った出来事はない。ただ、今に至るまで多大な苦労があったことは事実だ。経歴を語れば、何かしら医師の引っ掛かる部分も出てくるだろう。
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