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この街には標識が沢山見受けられる
何故かはわかりませんが…
至るところに
ここら辺りは霧もよく出るし、迷う人もいるからだろうか
多すぎて逆に邪魔だと思う…
横に視線を向けると
徐行の標識が建っている
徐行ねぇ…
しかしこの街で車は一切使われていない
というか、車が無いのだ
そうなるとこの標識は必要なんだろうか…
「おぉーい!!ドロボーだぁー!!誰か捕まえてくれー!!」
後方から声がする
後ろを振り返ると
物凄い勢いでスケボーを走らせ逃亡する者がいた
「のけのけー!おらぁー!!死にてぇかぁーー!!くらぁーー!!」
スケボーは対象に含まれるのかな?
でも、流石にあれは飛ばしすぎだよね
「おい!どけぇー!カレン!死にてぇかぁー!」
知らない内にどこかで加速魔法を覚えてきたボクのクラスメートだ…
カレンは徐行の標識に再び視線を向けた
君はこういう人のためにあったんだね…
案外標識も悪くない
「もういい!吹き飛べ!そしてあの世で後悔しろやぁ!カレン!!ゲヒャヒャヒャヒャー!死ねい!オーバーギアー!」
君がね
「フレアドライブ」
クラスメートは盛大に吹き飛んだ
少し待っていると役人が到着
「お役人さま、ドロボーはこいつです」
ボクは白目を向いた焦げ焦げのクラスメートを指差した
「あー、悪いね」
「いえいえ、当然の事をしたまでで…」
「君も署に来てもらえるかな」
「へ?」
思わず目を丸くするカレン
「いや…ボクじゃなくて…」
「君もだよ」
役人は横に建っている標識をコンコンとこづいた
標識の真ん中に魔法の字
左上から右下にかけて斜めの赤い線が入っている
それを見てたらりと汗がつたった
ひょっとして…
「魔法…禁止…?」
役人はニコリと笑って見せた
「わかってるじゃないか。さぁ、こっちだ来い」
両腕を引っ付けて、手首に縄が巻かれた…
街中での魔法の使用は許可された者以外禁止なんだそうな
最悪だ…
ネジの外れかけた標識がボクを嘲笑うかのようにユラユラと揺れていた
標識なんて…この世から無くなればいいのに…
ー奉行所ー
役人は到着するなりすぐ様、始末書を書き始めた
向こうでどんどん先に進められてるけど
なんか納得いかない…
悪い事をした実感が無いのに逮捕されるなんて
「あの!ボク知らなかったんです…最近この街に来たばかりで…」
「なら今回で見に染みて覚えてくれ」
むぅぅ…
「でも、相手も魔法使ってたじゃないですか。これって正当防衛にならないんですか?」
「ならないな。喧嘩両成敗って聞いた事あるか?」
ふぇぇ~…
「あー…名前は?」
「カレン…カレン・ウィロー」
心なしか…意外とショックが大きい…
「カレン…ウィローっと…性別は?」
「……」
見てわからないだろうか…
だとしたら、これは侮辱に値しないだろうか
ここは意地でも黙秘で…
「答えないと男と女の間に◯を書いてオカマにするけどいいか?」
「女!女です!女でお願いします!」
はぁ…
街に来て早々に犯罪者になるとは…
ショックがでかすぎて目が回った
なんか目の前がチカチカする…
貧血かな…
「…はいよ」
役人は悲しみで放心状態になったカレンの事など無視して始末書の片割れを手渡した
ゆっくりと手の中の用紙を広げて見てみると
カレン・ウィロー 一ヶ月の外禁に処す
と書かれている
「…外禁ですか?」
「ああ、しばらくダンジョンは禁止だ。家でゆっくり過ごしな」
「はい…」
カレンは立ち上がってフラフラと奉行所を出ていった
「先輩!先輩!」
奉行所の後輩が襖を開けて現れた
「ん?」
「あの子可愛かったですよね。だから連れ込んだんですか?」
見てたのか…てか、どんな理由だそれ
「バカ野郎」
「え~…連絡先ききました?」
「いや、」
「バカ野郎ですか?そこまで愚かだとは思いませんでしたよ!先輩!」
「お前だろ、それは」
標識表示街
それは標識の多い変わった街だ
人の世界とは思えない
どこかしら、美術館の絵画を思わせるような不思議な街並みをしている
そんな変わった街に住む変わった人々の物語
少し変わった物語
【カレン・ウィロー】
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