標識表示街

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「そういえば、あんたもう死んでんのよねー」 は? 私が死んでる…? 「何の話してんのさ…」 「あら?わかってないの?まぁ書類上だけどねー。レイリーちゃん」 「……レイリー?」 ………なるほど やっぱり、殉職者リストの名前 あれ、私だったんだ レイリーは私のもう一つの名前 居住地区で呼ばれてる名前だ 「はぁーん、そういう事…」 全てを悟ったようなレティの反応を見てリリーはクスクス笑った 「ふふ…そう。あの日は化物共を利用して、あんたらの虐殺を目論んでたの…まぁ、何人か取りこぼしちゃったけどねぇ…」 あの日… 私が装具やお金の(ほとん)どを失った日だ 道理で… 「あの日のクエストはおかしいと思ったよ。あんたらの仕業か」 あの日は異常に魔獣、魔物が多かった こいつらが撒き餌して呼び寄せたってとこか その圧倒的な魔物共の数に飲まれ、参加したほとんどの人間が死んでいったんだ 「中々のショーだったと思わない?沢山の人が死んでいく中で自分だけが生き残る…名誉な事よね。あんたも優越感に浸ってたんじゃないの~?レティ」 ニタニタ笑いながらこちらに視線を向けてくる ……胸くそ悪い… 「あんたの事を心底気持ち悪いと思う…頼むからもう喋らないでくれ」 そう言ってゆっくりと双剣に手をかけた 「まぁ、待ちなよレティ」 「……まだ何か?」 リリーは真顔になって「ふぅ…」と大きなため息をついた 笑ったり、神妙になったり… わけわからん 「さよなら」 彼女はノーモーションでいきなりナイフを飛ばしてきた っ! 狙いは私じゃない 妹のアルマの方向 レティは双剣を咄嗟(とっさ)に投げ当てて、相殺させた 互いの武器が高い金属音を立てて あらぬ方向に転がり落ちる 「ひゅ~ぅ、おっしぃ!」 彼女はニタリと笑う 危ない… 嫌な冷や汗をかいた レティは彼女を鋭く睨んだ 「どういうつもり?」 「どうもこうも…ねぇ?すきだらけなんだから、仕方ないじゃな~い」 きったねぇ野郎だ… 「ふふ…」 悔しいけど…レティ(彼女)の戦闘力は私よりも上 しかしながら…お荷物がいるなら話は別 彼女の重りが二つもあっては… これはもう彼女にとって 不利不利不利、不利である以外にない! 私にとっては超有利なわけ! 残念だったねぇ、レティ ズタボロにしてあげる… 「提案があるんだけどぉ……聞かな~い?」 「何?」 ほらほら、食いついた…あはっ 「私とゲームしない?」 「ゲーム?」 「何言ってんの?」と不思議そうな顔でレティは彼女を見た 「ちょっとした遊びだよ、遊び。余興、余興」 「へぇ…どんな?」 「えっとねー…バカな学生がよくやる、あのぉ、じゃんけんして負けた方は肩パンくらうってやつ」 「……」 「どっちが根をあげるかっていうね…」 「ごめん…私バカじゃないからそんな低能な遊び知らないわぁ……ごめんね?ほんとごめん」 「う、うるせぇ!バカにしやがって!泣かす!絶対泣かしてやる!」 リリーは地団駄を踏みながらどこかの悪ガキみたいな事を言っている 放っておこう しかし この提案…受けるべきか? 顎に手を当てて考える はっきり言って、この腐れ外道が何を考えてるかわからない 易々と受けるのは危険だよね… 「やってくれるなら、あの二人には手を出さない。どお?」 むむぅ…… んー… 「……その確証は?」 リリーは懐から一枚のくるまった紙を取り出し、広げた その紙には魔法陣が描かれている 「これにお互いの魔力を注いで、管理空館(マジックコート)を構成するの。言うなれば私とあんた、二人だけしか干渉しえない空間なわけ」 なるほど…その空間に入っている以上、外にいる姉妹には手を出せないわけだ それはいい それはいいとして… その空間は魔法で作られた物 何か他に企みがありそうだ… 「……その管理空館(マジックコート)やらは、他に何か制限があるんじゃないの?全て教えてくれないかなぁ?ちゃんと」 「あら、(うたぐ)り深いわね…他にはぁ……魔法は使えないのとぉ…あとはゲームのルールは絶対ってとこかなー。一度決めたら逆らえないって事」 ルールは絶対、ね… 割りと正当かな… 「いいよ…やろうか」 「よし、決まりね。まず刃物はいらないでしょ?お互い、端に避けましょ」 「…はいよ」 お互いに武器を置きに端へ移動する 先程投げた片方の双剣も拾って、二つ重ねて置いておく 後は投擲ナイフ数本と、リンゴの皮むき用小型ナイフを置いて戻る 「あの、ごめんなさい…迷惑ばかりかけて…何もできなくて」 アルマが口を開く 「いいの、いいの…これは私とあいつの勝負なんだから。お姉ちゃんの事、しっかり見ててあげて」 「はい」 そしてレティはルルアと目を合わした ルルアの目には不安が見てとれた そりゃそうだ 相手の提案してきたゲームに乗るわけだから 危険な匂いしかない 私もそう思うよ… 何でだろうね… 参加しちゃった 勝てるかどうかわからない まぁ、もしもの時は……死ぬかもしれないね…私は 彼女の傷口に目を向けた 出血は止まっている 傷口は… 「ちょっと、ごめんね」 少し服をめくって確認する ちゃんと塞がっていた 「やるじゃん」 とアルマの頭を撫でてやった そしてもう一度ルルアと目を合わす 「まぁ、任しといてよ」 「……ごめんなさい…お願いします」 ルルアは頭を下げる そこにレティは彼女の肩にポンと手を置いて、耳元で小さく呟いた 「10分経って戻んなかったら、先行っといてよ」 「えっ!?そんな!」 「いいから、ね?」 そう言い残して レティはリリーの元へ歩いていった 地面に魔法陣の書かれた紙を広げ、その上にレティとリリーの二人の手を置く 「準備オッケー」 二人の周囲が白い光に包まれる 紙を置いた場所から半径5メートル程の円型の白い光の空間ができあがった 外からは、光の中にいる二人の姿を確認する事はできない ー光の中ー 「さーてと、ルールは簡単。じゃんけんして、どちらかが死ぬまで殴り合う事」 はっ…確かに簡単だ 笑えるほどに 「オッケー」 「じゃーんけーんほいっ!」 レティがグー リリーがパー 「ははっあたしの勝ちっと」 はぁ…幸先悪し… 「はい、どうぞ」 彼女の方へ肩を差し出した すると腰の入ったパンチで思いっきり腹部を(えぐ)るように殴られた 不意な攻撃で対処できない 力の緩めたお腹に思いきり重い一撃が入った うぐぉあっ… 「ゴホッゴホッゴホ…かはっ…」 「まずは一発ぅ~」 は、はぁ? 「ちょ、ちょっと何で?何でお腹?聞いてないんだけど…」 「どこを殴らなきゃいけないなんて言ってないんですけどぉ~…ひょっとして馬鹿なの?」 くっそ… 超むかつく… 「なら次行こうか」 倍返しにしてくれる… 「はいはい。じゃーんけーんほいっ。また勝っちゃったぁ~」 くっ… 「よっと!」 同じ場所に拳がめり込む あがぁっ… 「ぐがっうぅ…」 「はいはい、次行くよー、次。じゃーんけーんほいっ。はいっもう一丁ぉ~!」 くそ…ヤバい… また同じ所に?ダメダメダメ… 「よいしょっ!」 レティは少し身体を捻って打撃部位をずらそうとしたが… 同じ所に拳が入る リリーはそこを抉るように拳をグリグリ押し込んだ あぐぁあぁ…… レティは同じ部位に与えられる衝撃の痛みで気が狂いそうになった 「かっは…………」 口を開けて、硬直する 悶絶ものの痛みがレティを襲った 「今、避けようとした?あはっ、言ったよね?ルールは絶対だから。避けようとしたら、この管理空館(マジックコート)に強制的に拘束される仕組みだからね?」 リリーは痛みをこらえるレティを見てクスクス笑った 「ねぇ…早く次やろうか?」 リリーは不敵に笑う ー洞窟内ー 「ねぇ、お姉ちゃん」 「ん?」 「さっき、その…レティさん何言ってたの?」 「ああ…」 『10分経って戻んなかったら、先行っといてよ』 「こてんぱんにのして来るから、ゆっくりしててって…」 ルルアは無理やり笑顔を作って妹に嘘をついた それを聞いて微笑むアルマ 「そっかぁ…かっこいい」 彼女が中に入って15分は経過しただろうか… レティさん…お願い…勝って 三人でここを出るんだから… ー光の中ー 「顔は最後にしてあげるよ。それまでもっと身体がボロボロになるまでイジメてやらないとねぇ…」 「はぁ…はぁ…はぁ…」 もうボロボロだっつーの… 呼吸するのもつらい 何発殴られたんだか 肋骨は…何本か折れてるみたいだ 呼吸する度にパコパコいってるし 間違いないなこりゃ… ほんと容赦ない 「じゃーんけーんほいっ!」 「グー」 レティは声に出して言った それに対してリリーはチョキ 勝った…始めて勝てた 「あらら、斬新ね…ふふっ、口を使ってきたかぁ。これはやられたわね~」 「流石に10回くらい負けたらね…」 じゃんけんの弱い私でも気づくわ あいこもなく、ず~っと一発で決まるし 「あんたずっと手ぇ見てるでしょ…」 「はぁ?……ふふっ、さぁね?」 しらばっくれちゃって、まぁ 私が次を出す瞬間まで見て、判断してるわけだ…いい動体視力してんね…まったく 「ほれっ、どこでもどうぞぉ~」 ニタニタ笑いながら身体をレティに向ける まぁ、骨折だらけでボロボロだし 死にかけのくそゾンビと一緒だわ どーせ、大した攻撃もできないでしょーに… 「よし…歯ぁ食いしばれよ」 「えっ!?ちょっ…」 リリーの顔面に重たい一撃をぶち放った 思いっきり振り切る 「ぶばぁあっはぁー!!!」 リリーは吹き飛んだ 「あれ?今避けようとした?ねぇ?ルールは絶対だから無駄な抵抗は止めなよ」 そう言ってニヤリと笑うレティ リリーは半泣きで頬を押さえて転がった 「うがぁぁあ……ちょっと、あんた…乙女の顔殴るなんて、頭沸いてんじゃないの?」 「どこでもいいんでしょ?だから一番腹の立つ部分を殴ったまでよ。何か問題でも?」 「くそがぁ!」 さぁ、次はどうでる? レティは彼女の視線に注目した 「次だ次!じゃーんけーん」 リリーの視線は 私の口元に釘付けだった 分かりやすい奴… 「ほいっ!なっ!?」 「はいっどーも♪」 「あんた今!口ではパーだったじゃない!」 「うん…だから手でグーを出したんだよ?」 「ふざけんなぁぁああー!!!」 「別にふざけてないさ…ほらっ、こっち向け。顔の輪郭変えてやるから」 思っきり顔をしばく 「うげえぇあぁー!!」 リリーはどす黒い悲鳴をあげてゴロゴロ転がっている よしよし このままやられた分を返させてもらおうか 散々やってくれたからなぁ 「こらっゴミ虫!…口の中切れちゃったじゃない!どうしてくれる!」 「……」 いや、知らねーし こちとら骨までやられてんのに 「どーしてくれる!?口内炎になったらどーしてくれんだ!コノヤロォー!!」 うるさいなぁ…無視無視 「じゃーんけーん……」 「コラァァァーー!!!!」
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