標識表示街

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神様… 私にお慈悲を… 私は善人ではないが きっと心を入れ替えます もう友達(カレン)の物を借りパクしたり 友達(カレン)に嘘を付いたり 友達(カレン)に迷惑かけたりしませんから! だから… だから、ここは勝たせてください! ここだけは…! 「チェックメイトね、レティ」 ここで死んでなるものか 「じゃんけんほいっ」 チョキとチョキ あいこになった くっ… 「あーいこーでしょ!」 「あいこでしょ!」 「しょっ!」 「しょっ!」 「しょっ!」 「しょっ!」 「なっ!?あっ…」 そんな…… レティはまた負けてしまった 神様ぁぁあああぁぁぁぁーー!! 「なかなかしぶとかったわね。でももう終わり。天にも見放されて(あわ)れな女ね」 レティ 茫然自失(ぼうぜんじしつ)…唖然…悲嘆 はぁ… よ~くわかったよ… 神は私の事がめちゃくちゃ嫌いだって事が… そりゃぁ…私は性格がいいとは言えない 自己中だし、自分勝手だし がさつな方かもしれない… ただ…私でもアイツよりはマシでしょ? あいつよりまともな人間だ だったら 助けるなら! 救うのなら! アイツよりも私でしょ?絶対私! そうでしょ?神様 違うんですか? 違うんですかぁ!!? そうですか…… くそっ!くそくそくそ… どうしてそんなイジワルなんですか… 優しさはないんですか… 悪魔ですか? 「さぁーてとっ、今回は何発ぶん殴れるかなぁ~♪」 リリーは再びサイコロを振った 今度こそ…死ぬかも… 目を狭めてサイコロに注目する 出た目は1 「おっとぉ、ついてるねぇー」 「……」 神よ こんなところで優しさなんていらないから この前に勝たなければ意味がない 意味がないのだ… 「じゃあ、遠慮なく!渾身のヤツを一発ねっ!と」 鉄棍棒を大きく振り上げて 一気に地面に叩き付けるが如く振り下ろす バキバキバキッ レティの右肩に強烈な衝撃が走った 「がっ!…うぐく…く…はぁ…はぁ」 こちらも複雑骨折 最早、立っているのがやっとの彼女 数字が小さい程、力のこもった一撃が入るものだ 一発とて、軽いものではない 何とか踏ん張った 「あらら、まだ耐えちゃうんですねぇ……すごい、すご~い」 棒読みでこちらを煽るリリー しかしレティには言い返す余裕は微塵もなかった あともう一押しってとこか 「そろそろ顔でも潰してあげる」 「……」 お願い! 「じゃーんけーん…」 南無三(なむさん)!! 「ほいっ!」 レティはチョキ リリーはパーを出した 三回目にしてやっとレティが勝利を掴んだ 「あっちゃぁ~…やられちゃったわぁ~」 頭に手をついて悔しがる彼女 何ともわざとらしい… 「あははは…さぁ…どこでもどうぞぉ~。まっ、身体を動かすのも億劫(おっくう)かもしれないけどぉ~、一応勝ったんだからちゃんと攻撃してね~」 そう言って大声で笑った 「そうね…じゃあ、行かせてもらうわ…」 三度目の正直 神は私を見捨てなかった… 「擬似技能(サブスキル)…発動」 「は?」 サブスキルだと…? 目を丸くするリリー レティは持っていた紫色の巾着袋に手を突っ込んだ 「あんた…何する気よ」 それを聞いてにこりと笑うレティ 「ん?そうねぇ…殴る回数を決めるんだよ?」 「はぁ?意味わかんない!」 巾着から引き抜いた手には数十個のサイコロが握られていた なっ… 驚愕(きょうがく) 「何よ、それ!?」 「サイコロじゃん…あんたも一つ持ってるっしょ?あらよっと…」 握った手を下に向けて開き、その辺にばらまき落とす コロコロと地面に転がり落ちたサイコロが止まってそれぞれの目が出た レティはそれを見つめて口を開く 「…だいたい50だぜ…」 「だいたいってなんだ!だいたいって!そこはちゃんと数えなさいよぉ!」 「……」 「無視すんなてめぇ!つーか、なんだコレ!?インチキだろーがこんなの!どんだけサイコロ持ってんのよ!キモい!!何がサイコロだ!こんなのなしなしなし!」 「はぁ?インチキ?よく言うぜ…ぺてん師ガール」 クスクス笑うレティ 勝ったのは、私だ このターンは私のものだ 「さーてと…どうしてくれようか…」 「あ、あああ、あんた。そんな身体で50発も殴る気?あーはっははは…はぁ~あ。あんたの方が先に壊れるわ、ばーか、ばーか」 クスッ 「そんな事もないんだよねぇ」 「はい?」 「更に私は、擬似武装(サブウエポン)を使用」 「サ、サブウエポン?」 バカな…そんなものどこに… 「私は痛みを代償に、【エクスカリバー】を召喚するぜ」 「ドロー」 レティは再び巾着袋に手を突っ込んだ エ、エクスカリバーだと!? あの伝説の宝剣をこいつが? ないないない このくそアマごときが持ってるはずがない… そんなはずあるわけが… 「はぁぁああああーー!!!!!!!」 なに…この気合い…何なの…? マジで出す気なの?えっ…マジで?……嘘でしょ!? 「エクスカリバァアアアアアァアアアアアーーーーーー!!!!!!」 巾着袋から引き抜いた手には金槌(かなづち)が握られていた 「ただのトンカチじゃねーかぁ!このウスラトンカチィー!!!」 チッチッチと指を左右に動かすレティ 「違いまーす!これはネイルハンマーでーす」 「どっちでもいいわぁ!」 レティはハンマーを片手にリリーにゆっくりと歩み寄った 「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!その巾着袋!魔法でしょ?」 レティはふふっと微笑んでため息をついた 「アイテムだよ…」 「嘘だ!」 「本当だって…この部屋で魔法は使えないんだろ?それが証明だ」 「……」 それに対してリリーは何も言い返せなかった 「なんだったら、逃げてみたらどお?…ほら……不正行為を行ったとなれば、拘束もされないじゃないの?」 「それもそうね…」 だが、その場から動けないリリー 「ん?どーしたの?ほら。行きなよ。さん、のー、がー、はいっ♪」 「……」 「あれ?動けないの?そっかそっかぁ~…それは残念だねぇ」 青ざめるリリー 嘘でしょ… 「なんなのよ!その巾着袋はぁ!?」 「これは私の携帯格納庫。何でも入るし、取り出す事ができる超激レアアイテム。いいでしょ?これ」 「そ、そんな…そんな物が…ふざけんな!」 「まぁ…そういう事だから」 「どういう事だ!説明しろ!」 「……」 「無視すんな!」 レティはそのまま彼女を無視してリリーの手前まで進んだ 片手に握られたネイルハンマーがユラユラと揺れている 「そ、そんなハンマー…反則だ!」 「しょうがないじゃん…引いちゃったもんはぁ…」 引いちゃったじゃねーだろ… 「お前さっき召喚するとかほざいてたじゃねーか!ふざけんなぁ!コラァアアアアア!」 「……」 「無視すんなってぇー!!」 レティは無視して彼女の目の前でハンマーの素振りを開始する それを見てリリーは汗をだらだら流した 「あ、あ、ああ、あんた…さっきまでボロボロだったじゃない!どういう事よ!?」 「さぁ?あんたを殴れると思うと、どこからか、底知れぬパワーが湧き上がってくるの……不思議ね…」 レティは素振りを続ける レティのネイルハンマーがブンブンとものすごい音を鳴らし、空を切る リリーは歯をガチガチ言わせ、震えながら彼女の素振りを見ていた 「あ、あのぉ…」 「ん?何?」 ブンッ!ブンッ! 「ちょっと、聞いてください…」 「ごめん…ちょっと忙しい…」 ブンッ!ブンッ!ブンッ! レティは素振りを続ける 「お願い!聞いてよ!」 「はぁ~…痛いだろぉなぁ…私のエクスカリバー」 ブンッ!ブンッ! 「見逃してくれ!お願い!何でも言うことを聞くから!お願い!お願い!お願いします!お願いします!お願いします!お願いします!」 リリーは大声で助けを求めた するとレティは素振りをやめて、彼女に視線を向けた 「わかった、わかった…なら一つ頼まれてもらってもいい?」 「あっ、ああ!何でも言ってよ!」 レティはリリーの耳元で呟いた 「地獄に行ったら閻魔にな…私がよろしく言ってたと伝えてくれ」 それはとても冷たく…空間全てが凍りつきそうなくらい低い声音だった 2ef4ba88-9d1a-4f06-ae3c-56b0f7f0ca21 【エクスカリバー】
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