標識表示街

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さすがにさっきの爆発で吹き飛んでくれるほど甘くはないか… アスラは何事も無かったかのようにこちらに視線を向けて立っている 「あなた一人になっちゃったね」 「……だからなに?」 「そろそろ自首してくれない?」 「自首…?なぜ?」 「……」 カレンはふぅと息はいた やるしかないか… アスラは口をつり上げて、不敵な笑みを浮かべている ……何がそんなに面白いのだろうか 「あなたはホントに期待通りね、カレン……ほんの数分であの二人をこの世から消してくれた」 「……」 「正義感が強いくせに時折(ときおり)非情なのね…いいわぁ…」 そう言ってカレンを見ながら舌なめずりをした こいつ… 「ふふっ…あなたはどのくらい頑丈なのかしら」 そう言って腰にさげた刀に手をかけた と思った瞬間 目の前まで彼女が来ていた っ…!早い カレンは後方に飛んで距離をとる アスラはそれを見逃さない ()かさず追撃にきた …抜刀術(ばっとうじゅつ) アスラは腰にさげた刀を抜刀する それに対してカレンは瞬時に前に出て距離を詰めた そして刀の(つか)を持って彼女の抜刀を止める 「あら…いい反応ね…」 「……」 ギチギチギチギチ… 「なっ…」 どれだけ押しても半端(はんぱ)に抜かれた(つか)が戻らない 押す力と引き抜く力 間違いなく押す力の方が上なのだが… 戻らない 一体どうなって… 「技量剛昇(パワーライズ)…」 んっ!? その言葉と同時に掴んだ腕が押し負けた 刀は力付くで全て(さや)から引き抜かれた だが、抜刀された刃は空を切る カレンは押し負けたと同時に 彼女の後ろに回って逃れたのだ あっぶない… 「なに…今の」 彼女は人間の腕力を明らかに超越(ちょうえつ)している 「へぇ~…さすがね…あれを避けるの……だったらっ」 アスラは左手に鞘、右手に刀を持ってカレンに突撃した そっちがそう来るなら こちちもそれなりの装備で行かせてもらうよ 裏手口(リミテッドトリガー) 彼女の手元に刀が落ちてくる それを眼前で右手でキャッチした 【黒刀身(こくとうしん):朧咲(おぼろざき)】 これで勝負 「はぁ~ん、朧咲…いいの持ってるのね」 軽くて早い、それでいて丈夫な刀身を持っている優良武器 まぁ、妥当かしら アスラは間合いに入って振りかぶった鞘を上から下に振り下ろす それをカレンは小さく動いて最小限に(さば)いてかわす 振り下ろされた鞘は堅い地面を深く(えぐ)った 砕いた部分が弾け飛び、砂が()き上がる 「っ…」 強力…あんなのくらったら痛いじゃ済まない 続いて右に握る刀を右から左へ一閃(いっせん) カレンはしゃがんでかわしたと同時に抜刀した 「せぁっ!」 アスラは左手の鞘で防ぐ 「おっと、あぶなっ…」 そう来ると思ったよ 間髪いれずにカレンの左手に握られた鞘が、下から斜め上へと振り上げられた 「うっ…」 後方に身を剃らすが、アスラの頬を少し(かす)める まだまだっ! 後方に距離をとるアスラに対して思いっきり鞘を振り投げる ギュン!! ブーメランの(ごと)く回りながらアスラの足元に向かって飛んで行った カレンは全力で地面を蹴って 前に躍進(やくしん)し、鞘の後に続く 「こんなもの…」 アスラは足元に飛んできた鞘を跳躍(ちょうやく)してかわす ここだっ! カレンは左足を前に踏み出して、それを軸に身体を回転させる 勢いに乗ったまま中央体転斬(たいてんぎ)りをぶち込んだ 「そこぉっ!」 フロア内に鉄と鉄とがぶつかり合う高い音が響き渡った 折れた剣先がくるくると空中を舞う そして二人から少し離れた地面にザックリと突き刺さる へ? びっくりしたのが 滞空中であったアスラが地面に降り立ち 刀を振り下ろしている姿が目の前にあった事だ 「案外(もろ)いのね…あなたの刀」 えっ… 握っている(つか)の先を目で追っていくと 刀身がひび割れて無くなっていた …嘘でしょ? カレンの右肩から左下にかけて鮮血が吹き出す 「えっ…うそ…」 「どうしたの?不思議そうな顔をして…」 アスラは気が動転しているカレンを見て楽しそうに笑う カレンは傷口を押さえて後方に下がった 「あら…上半身を切り落とすつもりで袈裟斬(けさぎ)りをしたつもりだけれど…フフッ、硬化スキルで少し防御力を上げていたのかしら?抜け目がないわね、カレン」 「っ……」 その通りなんだけど… いてて… お、落ち着け、落ち着け…出血はしたけど…傷は浅い まだいける まだ… でも…どういう事 あの時彼女は確実に空中で滞空していたのだ あり得ない… 今のといい…最初の攻撃といい 瞬間移動じみた動き… 考えられるのは ……速度強化 「加速魔法…」 「ん?」 加速魔法 その言葉を聞いてアスラの口がつり上がる 「加速魔法?まぁ、あながち間違ってはいないけど…それよりもっと上位技術(スキル)になるわね…言わば、秘術(シークレットスキル)というランクに位置付けされるものかしら」 秘術(シークレットスキル)… それを聞いてため息が出た 「私のスキルは技量剛昇(パワーライズ)」 「……」 「内容はそのスキル取得者の速度(スピード)攻撃力(パワー)防御力(ガード)、その他もろもろの身体能力及び魔法効果を何倍にも跳ね上げるもの」 なるほど… 近年(まれ)に見る最強術(チートスキル) 強い訳だよ… でも、これでわかった… 聞いてもいない事を 次から次へと話してくれるものだから、嬉しいものだ 有難い… 彼女は自慢話が好きなタイプだろうか まぁ、それはどうでもいいか 長期戦だと不利 それに… 近接戦闘では、こちらが圧倒的に不利……と、なれば… カレンはニヤリと笑ってアスラに視線を向ける ボクの得意分野で勝負するしかないよね カレンはその場に両手をついた 「炉心溶融(メトロダウン)」 彼女の言葉と共にフロア全体が下にズンッと沈む 「っ…あなた…炉心溶融(メトロダウン)って、まさか…」 そのまさかだよ 「そう…このフロア全体を時限爆弾に変えた」 【炉心溶融(メトロダウン)】 構成した結界内で大爆発を発生させる隠し爆発魔法 止める方法は術者の抹殺(まっさつ)のみ フロア全体が赤い石炭色に染まり、ジリジリと熱を()びてきている まさにサウナの中にいる状態となった 熱さはどんどん上がっていく 二人は額から汗を流した とても熱い…いいぞ もっと…もっと熱くなれ 更に熱くなれば…彼女も(あせ)って来るはず 「…早くボクにとどめを刺さないと爆発しちゃうかもしれないよ?」 「へぇ~…そう。飽きないわ…退屈もしないし…いい。いいわぁ……カレン、あなたの事が好きになりそう…というか好きよ」 彼女はカレンを見つめて、舌を出しながら両手で頬を包んだ 彼女は病気かもしれない… アスラの謎発言に目を点にしながら、手に力を込める 青い炎がカレンの右手を覆った 青い炎……綺麗… 「そういえば、あなた…火炎術(フレアスキル)が得意だったわね…私と一緒じゃない…私との相性も抜群だったのね…」 先ほどから、おかしな発言ばかり飛び出している…彼女は暑さで脳みそが沸騰したのだろうか… 「極炎追放(フレアドライブ)!!」 右手に溜め込んだ力をアスラに向けて解放させた 大きな豪火球(ごうかきゅう) 青い炎…流石に、迫力あるわね… しかしながら…フフッ 2倍ってところかしら… 技量剛昇(パワーライズ) 魔力上乗せ 「極炎追放(フレアドライブ)」 アスラは右手を突き出し、カレンと同じ技を発動させ対抗した 超巨大豪火球 赤い炎と青い炎 お互いの炎がぶつかり合う その瞬間 青い炎が全てを飲み込んだ 「なっ…」 灼熱の青い炎がアスラに覆い被さる 「う…くっ…」 押し負けた……私が? 嘘でしょ… 物凄い熱量で皮膚が焼かれた 「っ……邪魔っ」 彼女は片手で炎を払い退ける 装備の所々が黒く焦げ、皮膚も赤くなっていた 炎耐性があったとしてもダメージは受けるのだ カレンは(あご)に手を当ててアスラに視線を向ける 「あっれぇ?どうしたのさ?不思議そうな顔をして……」 その言葉にアスラの目は鋭くなった 「やってくれたわね…」 カレンは片手で指を揃えた掌を鼻の前まで持ってきて口を開いた 「ごめんごめん、火炎術(フレアスキル)者としてのプライドを傷つけちゃったかな?ま、上には上がいるという事だよね~」 「フフッ、そうね…その言葉…この後たっぷりとお返しするわ」 「はははっ…さぁ…おいで…これが最終ROUNDだ」 フロア全体が一段と赤く染まり、燃え盛った 決着の時は近い
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