標識表示街

18/29
前へ
/29ページ
次へ
「じゃあこれでどうかしら…獄炎大砲(バーニングキャノン)」 「ふ~ん…」 これまた、大技 だったら… お互いの腕に炎が(まと)う 無駄よ、カレン… 高等殲滅奥義(こうとうせんめつおうぎ)の上 更に4倍…いや8倍に上乗せしてあげる 徹底的に叩き伏せる フフ…残念だったわね どう足掻いても勝つのは私よ 口角がつり上がる彼女 もう少し楽しみたいけど 時間制限されちゃぁ…仕方がないわ カレンの腕に青い炎がメラメラと揺らめく ここで決まるかもしれない… 全力で行く 極限まで右手に力を溜める アスラに視線を向けると 物凄い熱量により陽炎ができていた 彼女が(ゆが)んで見える 何て魔力… 本気で来る ここが正念場だ 負けるものか ボクが勝つ 「これは返せるかしら?」 技量剛昇(パワーライズ)! 「極炎爆発(フレアバースト)!」 両者共に強烈な炎を一直線状に腕から発動させた 再びお互いの技が交差する 赤い炎と青い炎が物凄い音を立ててぶつかり合った 「っ…」 カレンの放った青い炎がどんどん押し負けていく 熱線の風圧と反動が腕にのしかかった 凄い重み… パワーの差は歴然だった …さっきよりも圧倒的だ… ここまでパワーアップできるわけ? っ… いけるか… 「フフフ…さぁ、どうするの?」 彼女が勝ちを確信し、最高の愉悦(ゆえつ)を楽しんでいる中 カレンが次の一手に出る 「押し返す…」 オーバーヒート上等 覚悟の上だ 行くよ 「猛炎爆裂(ボルケーノバースト)!!」 その言葉と共に腕から発動している炎の勢いが増大した 青い炎に渦が巻いてより巨大で強力な熱線に変化する いっけええぇぇー!!! 青い炎がどんどん前へと押し上がる 「えっ……まさか!?」 …8倍よ? カレンは押されていた所を(またた)く間に押し返した 押し寄せる炎の勢いにアスラの前髪が舞い上がる 未だに押し負けた事が信じられず、気づいた頃には熱線は彼女の目の前まで来ていた 「あっ…」 ゼロ距離 そして直撃した アスラはそのまま青い熱線にひかれていった 「はぁ…はぁ…はぁ…」 勝った… 熱線を放った部分は抉れていて、前方には何も残っていない 「ふぅ…」 ずっと張りつめていた気を緩めてゆっくりと息をはく カレンは胸を撫で下ろした 魔力を大幅に消費してしまった でも、なんとか勝てた よかった… 秘術(シークレットスキル)を持つ者同士、戦えば必ずと言っていいほど激戦となる 相討ち、又はどちらかが消えるまで戦う ボクが消えてもおかしくはなかった… 運がよかったのだ 本当によかった 「ふぅ……よかったぁ…」 「そうかしら…?」 へっ!? 声は後方から まだ生きてっ… 後ろを振り向くと眩しい光りが飛び込んでくる 大きな白い光り その激しい光りを放つ巨大な球体をぶつけられ、そのまま壁に押し付けられた カレンは瞬時に反応して、光りを両手で受け止める 「ぐくぅ…」 生きてた…しぶとい… 確かに攻撃は当たっていたはずなのに… 防御力でも跳ね上げて堪えたか… 彼女…ホントに強い… 触れた部分から焼けていく ジュゥウッ 「っ…」 これは… 「フ、極炎追放(フレアドライブ)!!」 発動させても、全て光りに吸い込まれていく 「なっ!?」 そんなっ!?押し返せない! 「フフフッ、これで終しまいかしら?」 「あっ…うっ…く」 装備が熱で溶けていく 熱つつつ!熱い!熱い! 球体を押さえているカレンの両手は激しく燃えた 「あぐ…ぅぅぅ…」 「ホラホラどうぞ!」 アスラは更に凄まじい力で押し付けてくる カレンは押されるがまま、壁にめり込んだ 「ふぐっ…」 まずい、まずい、まずい… 頬っぺが…焼ける 「あっはははは、私のとっておきよ?さぁ、召し上がって」 どうせならもう少し冷めたものをお願いしたい 逃げなきゃ死んでしまう 「リ…リミテッド…トリガッ」 背後に空間を開いて、背中からスッポリ入り、その場を逃れる そしてアスラから距離をとった場所に出た 「はっ…はっ…はぁ…はぁ」 危なかった… えっ、あれ? 目が霞んで… 「ん…?…なに?」 両手を顔の前まで持ってくる 手が二重にぶれて見えた 腕に痺れがあり、少し震えている 「…何これ」 身体の異常に戸惑っていると、背後から腕を回されて、そのまま締め付けられた 「くっ…」 早い… 「フフフ…あなたも加速できるの?さっきのよくかわしたわね…」 抵抗して内側から開こうとするが ロックされた腕が全く動かずほどく事ができない 彼女の力は強すぎる… というか… ボクの力が… 力が…抜けていく… 「う…うぐぅぅ…」 「どうしたの?調子悪そうね…フフッ、やっと毒が効いてきたのね」 毒?そんなものを… 「私の刀、【朱雀(あかすずめ)】。これは斬った者を痺れさせ、自由を奪う激レア武器なの」 …さっきの斬撃で毒が身体に入ったのか ヤバい… まいったな… 「でもね…気づいたと思うけど、今力が抜けていってるでしょ?」 「……」 「フフ、隠さなくてもいいのよ…わかってるから。それは毒のせいじゃないの。私のスキルのせいなの」 スキル…? 一体何個持ってるんだ…? くそ…身体に力が入らない どんどん抜けていく… カレンはその場に崩れて座り込んでしまった これは… 彼女がボクの生力を吸っている… 「触れた者の生力を奪うスキル極盗吸裂(テイクヴァイパー)。ずっとあなたとこうしたかったの…」 装備の間に手を入れられ 直で肌に触れてくる 魔力が急激に奪われていく 「うぅ……くっ…ぅ……」 「まだまだ残してたのね…さすがねカレン。愛してるわ…搾りカスのゴミ虫になり下がるまで全て搾り取ってあげるから。だから、ね?全部ちょうだい」 「や、やだね…」 「あら…()らされるのが好み?でもごめんなさい…時間がないから一気にいただくわ」 アスラは口をカレンの首筋にくっつけて吸い付いた 一気に魔力を吸い取られていく 「か…かはっ…」 こんな状態ではスキルも発動できない どうすれば…… ー洞窟通路ー レティ、ルルア、アルマの三人はカレンの元に向けて歩き出していた 「さっきの爆発音はぁ…、こっちかな」 レティはルルアに肩を借りながら洞窟内を歩く 「カレンさん、大丈夫ですかね…」 アルマが心配そうに口を開いた 「ああ、大丈夫、大丈夫。カレンの事だから今頃、三人共ぶっ飛ばして鼻くそでもほじってるんじゃない?」 「あははは…ちょっと、笑わせないでくださいよ」 「えっ、ははっ、面白かった?」 レティの言葉に姉妹は笑った しかし、そんな事を言いつつ カレンを追いかけようと一番にのり出したのは彼女だった 表情や言葉には全く出さない彼女だが、本当は内心とても心配だったのだ まだボロボロの状態で歩き探すレティの様子を見て 二人の姉妹にもそれが理解できた ー炉心溶融(メトロダウン)フロアー 未だにアスラに捕らわれ、生力を吸収されるカレン 「あっ…あ…く」 頭がボォーとして… ヤバい…これ…ホントに…死ぬかも… そんなピンチを迎えた彼女の目に地面でキラキラと光るものが入ってきた あ、あれは… 「くっ…をおおおおぉー!!!」 カレンは力を振り絞り立ち上がる 無駄よ、無駄 フフフッ…どんなに暴れても離れないんだから アスラは腕を緩めず締め付けたまま背中に張り付いている オッケェー…彼女は気づいていない そのまま離れるなよ… 一気に行く! 「はあぁぁぁぁーーー!!!!」 気合いを入れて、目的地点まで全力で走った そして勢いを殺す事なくその場所で背中から地面に向かってダイブ 「っ……うぉりゃあ!!」 ザクッ…!!! ズブブ…… 「うっ…きゃああぁぁぁー!!」 アスラ絶叫 甲高(かんだか)い悲鳴が洞窟の遠方まで響く そう… 地面で光っていたのは、折れて吹き飛んだボクの刀、朧咲(おぼろざき) 剣先が地面に突き刺さったまま残っていたのだ アスラの背中を折れた刀身が抉り貫き、胴体をズブリと貫通した 真っ赤な血が滴り落ちる カレンにも同時に刺さったがアスラの肉体を挟んでいるため傷は浅い 彼女は激痛に悶え苦しんだ 同時にカレンはアスラの緩んだ拘束を振りほどく お互い地面に転がった 「はぅあ…あっ、あっ……はっ……なっ、はぁ~…はぁ…なんて事するのよ!!」 「君が全部ちょうだいなんて言うから…その要望に答えただけだよ」 そう言ってカレンはニヤリと笑って見せた といっても彼女もほとんどの魔力を吸われに吸われてカラッポの限界状態 身体も麻痺して、言うことをきかない 彼女なりの精一杯の強がりだった もう…これ以上は… ……万策(ばんさく)炉心溶融(メトロダウン)くらいか… フロアはとても熱いが 爆発まであと3分程はかかりそうだ… 時間を稼ぐしかない… 「ぐくっ…あああああぁぁ!!!」 アスラは声を荒げて、突き刺さった刀身を背中から抜き、遠くに放り投げた 「はぁ…はぁ…はぁ…ふふふ…はははは…きいたわ…ホントに。流石、やるわね…カレン・ウィロー…最後の最後まで」 アスラは後方に高く飛んでカレンから距離をとる 着地点はフロアの突き出た高い壁 「魔力も充電できた事だし、フルパワーで地底の奥深く…そうねぇ…マントル付近まで沈めてあげるわ」 彼女の両腕に白い光りが集束する 「ま、またあれか…」 「フフフッ…どうかしら…さっきよりも強力なプラズマよ」 プラズマ… どれだけのスキルを習得してるんだか… 彼女は天才だ… 「…ア、アンコールは…頼んでない…」 「まあ、そう遠慮しないで」 彼女は笑いながら巨大なエネルギーを両腕に溜める 先程とは比べ物にならない かなりデカイ光りの球体 「フフフッ、避けられないわよ、これは。誰がくらってもひとたまりもないわね」 そうかい… だったら… だったらこれは… 一発逆転が狙えそうだ… 彼女はアホみたいにパワーを溜めて大技を放つつもりのようだ… あれなら炉心溶融(メトロダウン)を待つ必要などない 大チャンス到来 さぁ…集中しろ カレンは息を整え、魔力回復に努める これで最後 生きるか、死ぬか… Dead or Alive… 623ef146-551f-4a43-827c-ae490da3f9e6 【精一杯の強がり】
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加