標識表示街

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「あと少し…あと少ししたら消してあげるからね~♪」 アスラの頭上には大きなプラズマ球が激しい光りを放っている 強力なエネルギーの塊だ カレンは地面にしゃがみ込んで動かない しかし…こちらも密かに策略しているのだ 魔力の召集 さぁ…消えるのはどっちかなぁ 最低限の魔力は確保できた 来るなら来い… カレンはその場に立ち上がろうと足に力を入れた だがうまく立てない 「ん?」 というか…動かない 身体の震えで自由がきかない あれ…あれ? ホントに動かない… はれ? 「くぅ…」 毒?もしかして本格的に固まっちゃった? 嘘でしょ… 「くぐぅぅ…」 どれだけ力を入れようと 身体は言うことを聞いてくれなかった う、嘘ぉ!! お願い!動いてぇぇぇぇ!!! 「カレン!」 「はっ……」 レティ!? レティと姉妹二人がフロアの入り口に立っている 探しに来てくれたのか… でも…この中はヤバい 入ったら一緒に狙われる 「は、入ってきちゃだめええぇぇぇ!!!」 カレンは大声を張り上げた しかし、声を振り絞ったつもりだが 普通に三人ともフロア内に入ってきてしまった それを見て カレンの目は点になる 「えー?なんてー?」 レティの入ってきて一発目がこの一言だった もういいよぉ… 涙がダバーと目から滝のように流れ落ちた 「何泣いてんの?病気?」 うるさいよぉ… アスラは入ってきた三人に視線を向ける あれは…レティとあの姉妹… あらら、リリーはしくじったようね… まぁここで全員消せば問題ないか 「フフッ、入ってきてくれてありがとう♪手間が省けたわ。到着早々あなた達はもう終わりなの…四人まとめて消えなさい」 アスラの言葉に対して 余裕の笑みを見せながら口を開くレティ 「はぁ?何言ってんだ、あのポンコツは…終わり?あんたでしょ?それは。カレ~ン♪やっちゃってー!」 「……」 カレンは地面に(うずくま)っている 「あのー…カレン?」 「うくくっ……」 カレンは痺れて動けない 「ちょっと、カレン!しっかりして!どうしたの?お腹痛いの?」 お腹が痛い? ふざけちょる… しっかりしてって言われても…身体が言う事をきかないんだよぉ… 「うぐぐ…くぅぅ~……」 「そんな『へぇあぁぁぁ~』とかいいから!頑張ってますよアピールいらないから!」 そんな事、一言も言ってないし! こんな時にアピールなんてするか!バカ 「フフフッ、チャージ完了~♪」 レティはアスラの頭上にでき上がった巨大な光りの球に目を向けて、額から汗を流す 「カレン!ちょっと、早く!早く!早く!結果にリミテッドしないと全員消し飛ぶんだよ?わかってる?」 わ、わかってるよ 人の事情も知らないで 訳のわからない事をべらべらと… くそ…動け… 動け動け動け動け! どれだけ言っても その場から動けないカレンを見て レティは顔色を変えた 「カレン…」 マジなの…? レティはボロボロの身体でカレンの元へ走り出す そして地面に膝をつく彼女を両腕で包み込んだ レティ…? 彼女はカレンを抱き締めながら目を合わせた 「一応、今…あんたと私に硬化魔法使ったけど…あんなのくらったら……ひとたまりもないよね…はは」 レティはカレンの身体を再びギュウと抱き締めた 彼女が今できる最大の支援だった こんなボロボロの状態で ボクを助けにきてくれたのだ 「レ、レティ…」 まいったな…いきなり優しくされると…… ホントに困る… どうせならいつもの調子でいてほしいんだけど そんな事されたら… 泣けちゃうだろ… ボクも助けたい… みんなを… レティを… カレンは包んでくる彼女の腕を、手で握った そこであることに気づく あれ…身体の震えが止まってる… 指が動く… これって… 硬化魔法のおかげ? キタッ… 掌をグー、パー、グー、パーと開いてみる 「動く」 キタキタキターー!!! 「レティ…いける…ありがとね」 こそこそとレティの耳にしゃべりかけてウィンクをした レティはそれを受けてニッと白い歯を見せて微笑んだ 「あー…神様、仏様、マリア様ぁー…お助けを~」 わざとらしく叫ぶレティ (はた)から見ると超怪しいからやめてほしいけど 面白くてボクも少しにやけてしまった すぐさま無表情を作るカレン ここまできて疑念を持たれたら困るからね さぁ、来い! 「楽しかったわ、カレン。さよなら」 アスラはプラズマの球を下に向けて投げ放った 物凄い風圧と轟音がフロアを包んだ 白い光りが四人の視界を奪う 逃げ場はない でも大丈夫 ボクには取って置きがあるんだから はい、さよなら… 「リミテッドトリガアアァァァァァァーーー!!!!!」 「な、何を叫んで…」 その瞬間プラズマの球は向きを変えて飛んだ そうアスラに向かって飛んで行った 「は!?ひっ!」 彼女は何が起きたのか理解できない 驚きで目を見開いた 目の前には巨大なプラズマ 避ける場所などない 彼女は放心状態で直撃した プラズマはそのまま彼女を乗せ、洞窟にドテカイ穴を開けて飛んで行き、上空へと消えていった 洞窟に日の光りがさす カレンとレティの二人を照らした 「勝った…」 今度こそ勝った 間違いない… カレンは安堵してその場に背中から倒れ込んだ 全て出しきった… もうカラッポ そんなボロボロの彼女を横で見下ろすレティ 「ねぇ、カレン…お助け料は?」 そう言って、悪戯(いたずら)な笑みをうかべながら手を差し出してくる こいつ… 「ふざけんな…」 日の光りに包まれながら 二人して笑い合った
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