標識表示街

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「ところでさぁ…」 「うん」 「この部屋暑くない?夏?」 そういえばそうだ… 炉心溶融(メトロダウン)…かけたんだ アスラのプラズマは確かに結界を貫いたが、また修復して、このフロアはちゃくちゃくと爆発に向かっていた メトロダウンを止める方法は 術者の抹殺だけなので止まる事はない 「あー…このフロア、もうすぐ爆発するかも」 「「爆発!?」」 姉妹二人の声が重なる 「へ、へぇ…なんで?」 「爆発魔法…炉心溶融(メトロダウン)」 それを聞いてレティは血相を変えた 「それ使ったの!?早く言ってよ!」 「ごめんごめん、必死すぎて忘れてた」 たははとカレンは笑った 「たははじゃねーよ。早く逃げよ!」 「いや~…それがさぁ…もう動く力も残ってないんだ…一人じゃ無理かも…」 「そっかぁ…」 レティはため息をついてゆっくりと立ち上がった 「じゃあ三人だけでもいいから逃げよう!ルルア、アルマ行こう!」 そう言ってその場を去ろうとするレティ 人でなしにも程があるんじゃないかな…? カレンはそんな彼女の腕をガシッと掴んだ 「待ちなよ…」 「な、何?」 カレンの手は思ったより力強かった まだまだ元気じゃんか… 「水くさいなぁ…ボクも一緒に連れてってよ…それか一緒に天国にでも行ってくれる?」 ニコリと笑って話すカレンの姿は レティの心を凍てつかせた 「わ、わかってるよ…冗談だって!冗談!ごめん二人とも、肩貸して」 「「はい」」 「急げ、急げ…爆発したら木っ端(こっぱ)微塵(みじん)だ」 四人で爆発フロアから急いで離脱した 数秒後にけたたましい音と共に地響きが発生し、足場を激しく揺らす 「きゃあっ!」 アルマは目をつぶってその場に固まった そんな彼女の震える肩をカレンは優しく握って(つぶや)いた 「大丈夫だよ…爆発の被害はあのフロアだけだから…安心して…」 彼女の柔らかい言葉に 恐怖が飛散し、消えていく そのままゆっくりと洞窟内を歩いた 静かな洞窟… とてもダンジョンの中とは思えない 動物も魔物達も全て焼かれて消え去り、洞窟内には何も残っていないようだ 残っているのは自分達だけだろうか… いずれにせよ… このクエストは終わりだ 全て終わったのだ… 「後は…来た道を行けば…」 「うん、帰れるよ!生きて帰れる!」 ダメだダメだと何度思った事だろう 今はこうして…まだ生きている 大事な家族を失わずに また一緒に歩いていける アルマとルルアは泣いて喜んだ 安心して、嬉しそうに笑っている レティは二人の様子を見て小さく微笑んだ そりゃ嬉しいよね、こんな薄暗い場所で最後なんて迎えたくもないだろうし これから先、まだまだ強くなりたいし 経験したいし、体験したい やりたい事もあるだろう 嬉しいに決まってる 助けられてよかった 本当によかった… 私でも…助ける事ができた やれるじゃん… 私でも 救えたじゃん… 身体はバキバキだけどね… 微笑みながらゆっくりと目を閉じる 身体の激痛は続いているが それを彼女達に(さと)られないように顔には一切出さない 幸せそうな雰囲気に一人痛そうにしてちゃ…全てぶっ壊しだ それは野暮(やぼ)ってもんだよね レティはただ目を閉じて笑った 気遣いも心配もいらない 私が我慢すればいいだけの事だ 結局、数十人が焼け死んで それでも何とか生き残った者は、狂った殺人者に仕留められ、死んだ その殺人者もカレンとレティの手によって地に落ちたが このガラコ洞窟で多数の魔導師が散っていった とても甚大な被害 そんな中を彼女達は生き残り、生還を果たしたのだ ー外の光ー 外には一緒に来たウィルタ達と数十人の生き残りの魔導師が集まっていた 彼女は洞窟で負傷した者を助けに回っていた 思いの他、多くの人を外に連れ出している さすがだ… まだまだ生き残りはいたようだ…よかった 「ウィルタ!」 「あっ、カレン!」 カレンの声に気づき、彼女はこちらに駆け寄った 「カレン!それにレティも!無事でよかった」 「ウィルタもね。救出支援ありがと。助かったよ」 「全然大丈夫。というか、けっこう激しい闘いだった?」 肩を借りて歩くカレンは中々見ない… レア中のレア 「あー…まぁね」 ボロボロになった装備を見られて、恥ずかしそうに話すカレンを横目にレティが口を開く 「激しい闘いだぁ?死闘だったっつーの!ホント低階層で(らく)しやがって。ちょっとは助けに来なよ、ウィルタ~…ひょっとしてビビってたんじゃねーのぉ?だっせー」 「なっ!?私がビビった…?こっちは人名救助でいっぱいいっぱいだったんだ!死闘くらい一人でなんとかしろ!バカ!大バカ!!」 「は?バカ?んだとぉお!」 二人でギャーギャー言い合っている いたるところを骨折してるのに…よくやるよ、ホント… 「そのぐらいにしときなよ、レティ。あんまり動くと骨に響くよ?」 「大丈夫、大丈夫。これぐらい、丁度いいハンデだ」 負けず嫌いの彼女は止まらない なのでボクはレティの身体を数回つついてみた 「いっ!?…つつつ…カレン…何すんのさぁ…」 「ん?別に、なんとなく」 そう言いながら、両手の指をわきわきと動かす それを見て骨折少女はおとなしくなった まだ生き残った者の捜索は続いており 負傷者や戦闘で傷ついた者は洞窟の入り口付近にて、手当て及び待機となった カレンとレティは大木にもたれかかり、腰を下ろす 「後は…帰るだけ…?」 「うん…」 「そっかぁ…何かお腹減った~…」 「はは…確かに」 「ねね…帰ったらお寿司屋でもいこうよ」 「おっ、海鮮かぁ…いいねぇ。でもレティは(しば)く病院食だと思うよ?」 色々な場所を複雑骨折してるし 彼女は入院確定だと思う それを聞いて顔を曇らせるレティ 「えー…やだぁ…」 そんなこと言われても困るよ… 「やっぱり帰りたくなーい…」 何言ってんのさ… 「引っ張ってでも連れて帰るからね」 「引っ張ってかぁ…ちなみにカレンってどうやってここに来たんだっけ?」 「ん?裏手口(リミテッドトリガー)…」 「やっぱりね~…帰りは?」 「帰り?……あー……はぁ~…」 裏手口(リミテッドトリガー)しかないか… 「もう少し休ませて…」 「はははっ…頑張ってね~…カレン」 ゆっくりとまぶたを閉じる 二人並んで眠りについた 今はもうカラッポ… だから魔力回復に努めないとね 最後にもう一仕事待っている
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