47人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
ボクは晴れて、外禁から解放され本日から魔導集会所に出勤できるようになったのだが
「カレーン、解放おめでとぉー♪早速装備作るの手伝って~」
レティが引っ付いて離れてくれない状況にあった
「ちょっと、離れてってば。暑いよ」
「ねぇ、お願~い。私、カレンに寄生しないと生きていけないの!」
またしょうもない事を…
「ボクが復帰するまでの間、けっこうあったでしょ?何してたのさぁ」
「だって…こんな木の盾と棒じゃさぁ…」
彼女は以前のダンジョンで装備を殆どダメにしていた
所持金もしかり
確かにその装備じゃ何もできないか
「…パーティーに誘ってもらえばよかったんじゃ…」
「友達少ないから無理…」
お、おう…
「………なんか、ごめん」
「うん…」
どうやら、本当に助けて欲しそうなので協力しよう
まずはダンジョンに出るために受付で出発の手続きを行う
「おお!カレンちゃん。戻ってきたの?」
「ども」
受付のお兄さんのラディ
マッチョで明るい人だ
「それとレティちゃんも…その装備似合ってるよ?」
「黙れ…」
「おぉ…こわ。で、今日はどこに行くんだい?溶岩滴る火山の入口か?」
レティは一瞬止まってラディを睨んだ
「バカっ!そんな所、こんな装備で行ったら燃えちゃうでしょーが!」
「おう、そりゃそうだな…じゃあどうする?」
「それじゃあ…レティが選んでよ。ボクはどこでもいいからさ」
「やった!ありがと、カレン。んーとねー…どれどれ~…」
現在探索可能な行き先表を見て熱心に選んでいる
あまり無茶な所を選ばなければいいけど
ボクは辺りを見回した
そういえば
今日は人が少ないな…
集会所なのに、こんなにも静かだなんて
「ラディ、ギルドのみんなは?どこかに行ってるの?」
「ああ…それな」
彼は顔を曇らせた
「最近、殉職者が増えてねぇ。皆、警戒してるみたいだ。ギルドに顔を出さねぇんだ」
殉職者…?
「…誰がやられたの?」
「ほとんどがカレンちゃんの同級生だったよ」
「……」
ボクは1枚の紙が挟まったバインダーを渡された
上に殉職者
その下には名前がずらりと書かれている
アルド、ウィル、ナタリア、ビスター、ララ、ビル、ツウェル、サバン、ライリ、ハーバー、ニシェル、ヒグレ、ウォール、シグレ、ウィグリー、キララ、ベルラ、カルマ、リーラ、クロア、ノノエ、シャルル、サルバ、ココ、ドーラ、フレーム、カローラ、フリミー、ペルー、レイリー、ルイス、バーン、ガルバ、クラーク……
何なの…
こんなに…?どうして?
「…何があったの?」
「それがわからねぇんだ。みんなダンジョンに出て行ったきり、戻って来ない」
だとしたら
「まだ生きてるかもしれない…」
「カレンちゃん…ダンジョンに出て2週間経っても連絡が来ない場合は殉職扱いがうちの決まりだろ?」
「…そっか」
外に出たら自己責任の世界
他人がどうなろうが周りは知らない
知ったこっちゃない
誰も助けに来ないのだ
少し冷たい気もするが…
それはそうと…外で一体何が
「カレーン♪……って、どうしたの?暗い顔して」
「いや、別に…エリザが喜びそうだなって思ってただけだよ」
ふーんと興味無さげに答えるレティ
「あっ、そうだ!行く所決まったよ!ここ、ここ!」
嬉しそうに行き先表を見せてくる
「よぉーし!行くぞぉー!カレーン!報酬もガッポリもらっちゃおうぜぃ!」
「いや、今日は止めよう」
目が点になる彼女
「は?」
「ん?」
「は?」
「うん」
「うんじゃねーよ」
「しばらくダンジョンに出るのは無しにしない?」
それを聞いてレティはその場に崩れ落ちた
「はぁ…カレンが私をいじめる」
心外だなぁ…
「いじめじゃないから。今は危険性が高いから、ダンジョンは無し。当然の判断だよ!」
「えー」と駄々をこねるが、絶対に行かないし、行かせない
「依頼こなしていこうよ、依頼」
「依頼?街の人の?報酬と全く見合ってないあの依頼をきくの?」
本音だだ漏れだね…
「いいでしょ?街の人と仲良くなれるし」
「別になりたくないし、報酬少ないし、ランクも上がんないし、良いこと無いんですけど…」
…わがままだなぁ
「簡単なやつからコツコツ行こうよ、手伝うから。徐行で進めば怖くないってね」
「徐行…?何言ってんだこいつ…」
うるさいよ…////
「ていうかほんとに手伝ってくれる?」
「いいよ。君が満足するまで付き合ってあげるよ。ボクは友達を置いていったり、先に行ったりしないからね~」
少しイタズラな笑みを作って言てやったけど
「ホント?わーい♪先に行ったり、少しでも抜け駆けしたら針四千兆飲んでもらうからねー!」
気にしてないし、針四千兆の約束までしてくる始末
相変わらず自分の事しか考えていない彼女に呆れた
二人は簡単な依頼を受注して、集会所を出た
「ねぇ、カレン。どんな依頼受けたの?」
「落とし物の捜索だって」
「ふーん…場所は?」
「殿田だって。レティの家近いんじゃない?」
レティは依頼表をカレンからもらって確認する
「ああ、近い近い。わかってるね~、カレ~ン」
カレンは言葉を発することなく親指をグッと立てた
それを見て嬉しそうにレティも返す
「てかっこれ、依頼主ミオさんじゃん。印鑑落としたって。また、ドジだなぁ…ホントに」
彼女の知り合いだったようだ
ー殿田地区ー
「こんにちは、レイリちゃん」
「はいはい、こんにちは」
「なんじゃレイリー、もう帰って来たんか。若ぇ者はしっかり働かんかい!」
「失敬な、仕事しに帰ってきたんだよ。柴田さん」
彼女の居住地域だ、流石に知り合いが多い
しかし…
「ねぇねぇ、レティ…レイリーって?」
「ああ、この人達アルファベットが読めないみたいで。私が来た時からずーっとレイリーって呼んでくんの」
彼女は面白おかしそうに笑った
「なるほど」
いい雰囲気
殿田は気の良い人達ばかりのようだ
…でも…何か引っかかる…
「カレン?早く行こうよ」
「あっ、うん!」
まぁ…
気のせいだよね…
それにしても、殿田も沢山標識が刺さっている
熊注意、猪注意、つちのこ注意なんてのもある
つちのこって…
「つちのこ注意って何?出るの?」
「あるおじいちゃんが見たって言うんで、標識に追加されたんだと。まぁ、出ないだろうけどねー。私なんてボランティアで、つちのこ注意ポスター作らされたよ」
そう言ってやれやれと首を振る
若い者は何かとボランティアをやらされるみたいだ
レティも大変だね
歩いていたら
公園の休憩所や掲示板に彼女の手作りポスターが貼ってあった
コレコレと嬉しそうに見せる彼女
へぇ…すごい
「うまいね…」
「でしょ?けっこう凝ったんだよね!こことか見てよ~」
そうやって見せつける所がなんともレティらしい
とりあえず、褒めまくったら鼻をフンスと鳴らして、大人しくなった
この街は情報がすぐに標識やポスターとなり、設置されるようだ
良いとは思うけど
何でもかんでもはちょっと…
デマもあるから気をつけないとね
ボクたちはそのままミオさんの家に行き、任務に移った
依頼は、無くした印鑑の捜索
だが、探すまでもなくすぐに見つかった
普通に
ミオさんの胸ポケットに入っていたからだ
何しに来たんだろうね…ボクたちは
「あっら、やっだぁ~。」
「………」
「おっかしぃーわねぇ~。何でかしら~」
おかしいのは…ミオさんですよね…
声に出しては言いませんが…
「たく、誰よ…こんな所に入れたのはぁ…やーね」
「さぁ…誰ですかね…」
紛れもなく、あなたです…
ボクたちは任務を達成?していたので、集会所へ向かう事にした
「ねぇ…レティ。どうだった?」
やりがいはゼロだったけど…
「ん?どうだったって…まぁ、いいんじゃない?こんな簡単な依頼で報酬がもらえるなら」
儲け、儲けと嬉しそうにしている
……案外お気に召してる?
「よーし。カレンも手伝ってくれるし、地道に行くかなぁ。これからもよろしくね、親友」
レティがいいならいいか
「はいよ、親友」
今日はこれで終わりかな
二人で、多種多様に並んだ標識を眺めながら来た道をゆっくり歩いた
最初のコメントを投稿しよう!