運命の恋

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本当は何も感じてないわけじゃない。 傷ついてる。悲しい。助けてほしいって、疎まないでって心が叫んでる。 だけど気づかないふりするしかなかった。 これ以上傷つきたくなかったから――― 「ちゃんと一言、ツラいって言ってみろ。そしたら何かが変わる」 泣けた。 見ず知らずの人の言葉がこんなにも温かいなんて知らなかった。 名前しか知らない人。 名字も職業も知らない。 結婚してるのか誰かがそばにいるのかさえ知らなかった。 お互い、名前しか知らないまま数週間奇妙な同居生活をした人――― そして。 家に戻って両親とちゃんと話し合うと決めたわたしを、二年前に、雪の降る中、静かに見送ってくれたひと―――
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