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報告メール

『・・・以上のことから、死因に至る経緯には不明点もあるものの、現場の状況から事件性はないと思慮される。

９月３０日
長野県警察松本中央警察署　刑事課鑑識係　司法警察員　中宮斗真』

　ふぅ、やっとできた。
　このところ、事件が重なっていたから、報告書の作成は大抵、持ち帰り仕事になっていた。本来、情報保護の規定により、持ち帰りの仕事は禁止なのだが、こうも仕事が立て込んではやむを得ない。

　八月から、市内で脱水によると思われる不審死が相次いでいた。
　どの被害者のプロフィールにも共通することは、一人暮らしということくらいで、あとは性別も出身も年齢もばらばらだった。
　今年は酷暑だったから、そのせいだろうか。だが、高齢者ならともかく、二十代から五十代の既往歴のない、健康体の人間が、そう簡単に脱水症状で命を落とすだろうか。
　しかし、どの不審死も今回の事件と同じように事件性は見られず、全て病死として片付けられていた。

　とにかく疲れた。
　報告書を添付ファイルにし、メールで上司に送信する。

　明日は非番、明後日は有給消化だ。鑑識はローテーション勤務だから、休みがちゃんと取れるのはありがたい。

　休みの間は、もっぱら映画を見ている。
　最近のマイブームは、映画を見てレビューサイトに感想を書き込むことだった。その感想に共感されると五段階評価で星を付けてもらえる。同じ趣味の友人がいないから、感想を共有できる人間がいるというのは、嬉しいことだった。

　たとえそれが、顔の見えない誰かだったとしても――

　星が増えていく快感。