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「書き初めをするぞ!」
毎年恒例の家族で初詣の日の朝、親父は突然にそんなことを言い出した。初詣の日は親父が女体化した俺の着物姿が見たいというから着付けであんまり時間ないのに……。俺や母さんも書くのかと思ったら母さんが俺を着付けする間の親父一人の暇潰しらしい。覗かれる心配がなくなるから有難いけど。
「はい。瑠璃可愛い」
母さんが着付けしてくれた姿を姿見で見るとちょっと変わった着物で我ながら可愛いと思う。
「お父さんに見せにいきましょ」
そう言われて一人で書き初めしている親父に着物姿を見せに行く。
「瑠璃!今年も可愛い!毎日可愛い!」
「ありがと……」
この段階で毎日という単語が出るのは甚だ疑問だが、それより親父の書き初めに書かれた文字が気になる。
「親父、その言葉……、何?」
『筆符』
そんな言葉あったっけ?
親父はドヤ顔を見せる。
「これがお父さんの今年の目標だ!沢山出会えることを願って!」
「なんて読むの?」
「ひっぷだ!」
初詣に行く前からとても疲れた。
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