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「マジかよ......」
船内にあらかた問題がないことを確認した後。
窓から外を見て、俺は頭を抱えた。
宇宙船の外に広がる景色は一面の白、白、白。
地面も岩も、遠くに見える山脈でさえあまねく純白に染まっている。空は薄暗く、真っ白な嵐がひっきりなしに吹き荒れている。
いくつかの主要なコンピューターが故障してしまったらしく、詳しいことはわからないが、どうやら目的地に向かう途中でこの星に不時着してしまったらしい。修理しようにも資材が足りないので、救援を頼むほかない。
幸い無線機は無事だったので、俺は早速、地球にある司令部へと連絡をとることにした。
現在地がわからないため機器の調整には戸惑ったが、三日後、なんとか連絡をとることに成功した。
久しぶりに聞く他人の声に安堵しつつ、俺は現状を報告する。
「――そういうわけで、至急救援を願います。どれくらいかかりますか」
「こちら司令部、今そちらのおおまかな現在位置を捕捉した。そして、これは大変言いにくいことだが、現在貴船の周囲に救援可能な宇宙船はない。なるべく近くの惑星から救援部隊を手配するが、相当の時間がかかることを覚悟してくれたまえ。」
「承知しました」
「それともうひとつ、君が不時着した惑星についてこちらでも調べてみたが、どうやらまだ人類未踏の星のようで何のデータもない。そちらでわかることはあるか?」
「計測機器類が故障しているので目視の情報のみですが、一面真っ白の星です。動植物の類いは確認できません」
「そうか。ならばおそらく、その星は良くて氷河期、悪ければ大気も存在しない氷の星だろう。くれぐれも外には出ず、落ち着いて救援を待つことだ。安心したまえ、君の乗っている船には優秀な空調機能が搭載されている。船内は自動で快適な状態に保たれるはずだ。......少なくとも燃料のあるうちは、ね」
最後に不吉なことを言い残して司令部との交信は途絶えた。余計なことを言うなと文句のひとつでも返してやりたい気分になったが、そんなことでバッテリーを無駄に消費してしまえば本末転倒だ。いざとなれば無線機のバッテリーは宇宙船のエネルギーに充てることもできる。節約しておいて損はない。
念のため司令部から聞いた救援部隊の到着予想時間と船の燃料持続時間を計算してみた。かなりギリギリだが、なんとか保ちそうだ。
少しだけ安心して、俺は窓の外を眺めた。
惑星は今日も一面の白に覆われていた。
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