漂白惑星

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 数日後。 「この星、暑いですねえ。宇宙服脱いじゃダメですか」 「お前は何の話を聞いていたんだ? ダメだ、危険すぎる」  救援部隊の若い男が軽口を叩き、隊長とおぼしき男がそれを諌める。  少し前を歩いていた女性の隊員が振り返って不安げに口を開いた。 「要救助者は大丈夫でしょうか。最後は無線の反応もなくなってしまいましたけれど」 「おそらく向こうのバッテリー切れだろう。急げばまだ間に合うかもしれん」  話しながら歩いていると、先行していた隊員から通信が入った。 「隊長!! 要救助者、発見しました!!」 「了解、すぐ向かう」  報告のあった場所に到着すると、そこには不時着したとおぼしき宇宙船と、傍らに一人の男性が倒れているのが見えた。男性の異様な姿を目にして、若い男性隊員が思わず呻く。 「うわぁ、なんだこれ。髪も肌も真っ白になってるぞ」 「耐えきれず外に出てしまったらしいな。幸い命に別状はないようだが、この様子だと視覚に障害が残りそうだ。とすれば、本当に辛いのは目が覚めたときかもな......」 「にしても奇妙な星ですねえ。何もかも真っ白で、最初はオレ、雪が積もってんのかと思いましたよ」 「詳しく調べてみないことにはわからんが、恐らく、この星の大気の影響だろう。物を白くする作用があるらしい。宇宙船が無事なあたり、金属やガラスにまでは影響しないだろうが、油断は禁物だ、救助を急ごう」  隊長の言葉を受けて救援部隊の隊員達はテキパキと自分達の役割を果たし始める。  その背後を、毛皮だけでなく、元は赤かったはずの眼球までも真っ白に染めたハツカネズミが覚束ない足取りで駆け抜けていった。 -END-
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