5042人が本棚に入れています
本棚に追加
「そ、副島さんにはいつも『待ってる人がいる』ってちゃんと断ってたってば!わざわざ職場まで来て牽制しなくても良かったのに!」
「…『いつも』…『断ってた』…ってことはやっぱり言い寄られてたんだな?」
あれ?
もしかして私、墓穴掘った?
晴臣の額にビキビキと音がしそうな勢いで青筋が浮かび上がる。
「あの男…俺が近く結婚するって言ったら『自分は社内に好きな子がいるけど、完全な片思いなんです』とか爽やかに言っときながら、しっかり告ってやがるし」
「そこら辺も把握したうえで来たんじゃなかったの?」
「何のコネもツテもないところを選んで就職したんだろう?さすがにそこまでは知りようがない。でも、千歳は昔からめちゃくちゃモテるからな。光城の名前まで使って先回りした甲斐はあった」
そうか。
そっちの名前を使ったのか。
副島さん、仕事熱心なせいで飛んで火に入る夏の虫…。
重ね重ね申し訳なくなる。
「何もそこまでしなくても…」
「いや。千歳は嫉妬すると、何しでかすか分からないからな」
冷たいのにジトッとした目。
あ。
まずい。
「ずっと気になってるんだけど、あの夜千歳、手塚にどこまでー」
「あーっ!もうこんな時間!!戻らなきゃ!!」
勢いよく立ち上がり、鞄を持って個室を出た。
最初のコメントを投稿しよう!