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その場をたまたま通りかかったランチ帰りのOLさんにも聞こえてしまったらしく、私まで白い目で見られてしまった。
「ちょっ!道端で何てこと言うのよ!?それに、こんな所に座らないで」
「千歳が可愛いこと言うのが悪い」
今度は通りすがりのお婆さんに聞こえたらしく、「あらあら、イイわねぇ、愛されてて」なんて微笑まれる始末。
さっきより一層恥ずかしい。
「もう、そんなのどうでもいいから早く立ちなさいよ!」
「もう勃ってる」
「は?」
「……何でもない」
晴臣は、何故か気持ち前かがみ気味で立ち上がると、私の手にスルリと指を絡ませて歩き出した。
「…何よ。朝は払い除けた癖に」
実はちょっと根に持っていることを、チクリと刺せば、
「仕方ないだろ。酔ったおじさんに『式が終わるまで二度目は禁止』って二日間で100回くらい指切りさせられたんだから」
と、実にしょうもない答えが返ってきた。
「でも、何も払い除けなくったって…」
「ちょっとでも触ると、もっと触りたくなるんだよ」
言いながら、絡めている指を、晴臣が意味ありげに撫でる。
「…お父さんと100回指切りしたんだよね?」
「うん、まあ、でも…危うく洗脳されそうだったけど、よく考えたらその約束、そもそも無効なんだよな。二回目とっくに済んでるし?」
そこでピタリと晴臣の足が止まった。
「ってことで、ちょっと寄って行こうぜ」
気づけばいつの間にか裏通りまで来ていて、そこから先はラブホ街。
「昼間っから何考えてんのよ!?大体私、仕事中なんだから!!」
一喝して、心底残念そうな晴臣に会社まで送らせた。
でも、夜は形成逆転。
気を失うまで求められ、薄れゆく意識の中でぼんやりと思った。
───ああ、きっと、私達はこれからも、ずっとこんな感じ。
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