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「どうぞ」と返事をすると、いつものビジネススーツとは少し違う、ディレクターズスーツ姿の遼平くんが部屋に入ってきた。
「ごめんね、突然。どうしても椎名くんより先に可愛い姪っ子の花嫁姿が見たくて。松本と織田村に協力してもらったんだ」
謝りながら、遼平くんの顔がクシャリと歪んでいく。
「本当に…綺麗だ」
セットした髪が乱れないよう、そっと頭を撫でられる。
「初めて会ったとき、君はまだ制服姿の中学生だったのに…もうこんな綺麗な花嫁になって椎名くんのものになるんだね…」
「遼平くんが松本さんに話を通してくれたお陰だよ。ありがとう」
「僕がちーちゃんにしてあげられるのは、これくらいだから。あとは、永美と一緒に、ずっと、ずっと、君の幸せを願ってる」
永美ちゃんはここにいないのに、遼平くんを通して確かにその存在を感じた。
優しい笑顔が寂しそうじゃないと言えば嘘になる。
でも、遼平くんは、失ってからもなお思い続けることで、永美ちゃんを自分の一部にしていっているんだ。
それを目の当たりにして、心底この人が叔父で良かったと思った。
「…ありがとう。遼平くん、永美ちゃん」
言った途端、涙が溢れてしまった。
「ダメだよ、泣いちゃ。僕が松本に叱られる」
亮平くんがポケットからハンカチを出して、涙を拭いてくれていると、ドアの向こうが急に騒がしくなった。
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