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「俺が先ですってば!」
「いーや!私が先だ!!千歳ちゃんの大事なヴァージン奪ったんだから、花嫁姿を一番に見る権利くらいお義父様に譲りなさい!!」
アホみたいな会話が筒抜けになってきたかと思うと、晴臣とお父さんが、ノックもなしにもつれ合うように入ってきた。
そして、私と遼平くんの姿を見て、仲良く絶叫。
「「あ゛ーーーーーーーっ!!?」」
もう、折角の遼平くんとの感動のシーン、ぶち壊し。
「何でよりによってアンタが最初に見てるんだよ!?」
「遼平、そういうとこあるよね!!?いつもシレーッと抜け駆け的な!!」
「仕方ないでしょう?二人がいるとちーちゃんと落ち着いて話もできないんですから」
呆気にとられ、すっかり私の涙が引っ込んだのを確認すると、遼平くんはハンカチをポケットにさり気なくしまった。
でも、目ざとい晴臣は、その仕草を見逃さなかった。
「泣かせたのか?千歳に何言った?」
通り過ぎようとする遼平くんの肩を掴み、引き止めた晴臣の目は一触即発だ。
「…純粋に、僕と永美からのお祝いの気持ちを伝えただけだよ」
ふ、と晴臣の手から力が抜けると、遼平くんはそのままドアまで歩いて行った。
そして、ピタリと足を止め、振り返って一言。
「言い忘れてたけど、ちーちゃん、椎名くんに愛想が尽きたら、いつでも僕の所においで」
再び晴臣の怒りが沸点に達するより早く、退散して行った。
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