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色めき立つゲストたちをかき分け、鬼の形相をしたお父さんがすっ飛んできて、声にならない声で晴臣を問いただす。
「はるおみいぃっ!!どういうこと!?どういうことおぉっ!!?」
どうもこうもない。
心当たりはありまくりだ。
晴臣は、プロポーズの夜からほぼ毎晩、避妊せずに私を抱いているのだから。
私はもともと生理不順で、子どもができにくいと思っていたものだから、今の今まで気づかなかったんだけど。
晴臣は私の背中をに手を置いたまま固まっている。
この場をやり過ごす言い訳でも考えているのだろうか。
痺れを切らしたお父さんが、「何とか言ったらどうなんだ」と、晴臣の顔を覗き込もうとして息を飲んだ。
「100回指切りげんまんしたのに!!こんなところにこんな…」
どうやら私の背中に昨夜の名残を発見してしまったらしい。
そう言えば、結婚式まで二回目禁止とか言ってたんだっけ?
…ごめんね、お父さん。
謝ろうにも謝れないでいると。
晴臣が、突然自分の着ていたタキシードのジャケットを脱ぎ、バサリと私の体にかけた。
そして、次の瞬間―
私をすくい上げるように抱きかかえ、「病院、行ってきます!!!」と言って、脱兎のごとく走り出した。
こうして、結婚式場史上、後にも先にもない、新郎新婦不在の大宴会は、「3ヶ月でした」という連絡を受け、益々盛況なまま幕を閉じましたとさ。
―before or since 完ー
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